第3話『大ピンチ!キッパー戦闘不能!?』

「メモリー・セットオン!!」

『アゴベル!!』

「レディ・シュート!!」


魔法陣から軍人風の装束に身を包んだ巨体が出現する!

右腕は巨大なガトリングガンであり、左目に取り付けられたスコープが赤く輝いている。


「ハッハッハッ!!」

赤いスーツの男、ブルが吠えるような笑い声を上げた。

「これがおれのメモリー、アゴベルだぜ!」


「出やがったな!ドッグアイ一味!」

シュウはメモリープレイヤーを構える。


その日、サロンとシュウはふたりで学校からの帰り道を歩いていた。

ロイは、メモリーの研究のために、早く帰りたいといって先に帰っていた。

キロメはいつも通りだ。

彼女はなぜか水曜日の放課後は必ずひとりで家に帰ってしまう。

サロンとシュウは家が隣通しということもあって、ロイとキロメがいないと必然的にふたりで帰ることになるのだ。


そんな下校中、突然木の影からブルが現れ、メモリーバトルを仕掛けてきたのだった。


「あれ?今日はひとりなの?」

サロンはあたりを見回していった。ドッグアイ一味の他のメンバーが見当たらない。


「パピーとマルチーズはバイト中ですぜ!」

「「バイト〜!?」」

「怪盗のクセにバイトなんてしてるわけ?」


「隣町でヘマをやらかしたおれたちは渋々この町に来たんですよ。いまや逃亡中の身、怪盗だけじゃ食っていけないんです」

「おまえは働かなくていいのか?」

「……おれは、このナリですから、コンビニのバイトは無理なんですよ」

シュウとサロンは、パピーとマルチーズかコンビニのレジ打ちをしている光景を想像して、苦笑いを浮かべた。


「パピーたちが働いている間に、ひとりでおまえを仕留め、報酬を手に入れてやりますぜ!覚悟!!」


「仕方ねえ!相手になってやるぜ!行くぜ、キッパー!」

「おう!」

「メモリー・セットオン!レディ・シュート!!」

魔法陣からキッパーが飛び出す!


「キッパー!先手必勝だ!」

「そうはさせませんぜ!アゴベル!スナイプショット!!」

アゴベルのガトリングガンが火を吹く!!

「くっ!!」

キッパーは、両腕にブレードを展開し、銃撃を受け止める!

「どこが"スナイプ"なんだよ!!」


「ハッハッハッ!このまま火力で押し切ってやりますぜ!!」

「キッパー!攻撃を躱せ!」

「おう!」

キッパーは、攻撃を弾くと、瞬時に射線から飛び離れる!

「一気にヤツに近づくんだ!」


「ちょっと!あんなやつに近づいて大丈夫なの!?」

サロンが、シュウを止めようとする。

「いいんだ!ヤツはアゴベル、ゲーム通りなら、遠距離攻撃は強力だけど、近距離からの攻撃にはめっぽう弱いはずだ!いけ!キッパー!」

キッパーはジグザグに高速移動し、一気に距離を詰める!

重い銃火器を装備したアゴベルは身動きが取れない!

「そこだ!!ドロップシュート!!」


KABOOOM!!

アゴベルはダウン!!


「く、くそー!!覚えていろ〜!」

ブルは捨て台詞を残して逃げ去っていった



「ふう、なんとかなったな!」

「シュウ……?」

シュウはサロンの探るような視線に気が付き狼狽えた。

「え?な、なに……?」

「あんた、ヤケにあのゲームに詳しいのね?」

「え!?」

シュウはギクッとして固まった。

彼は確かに、重度のAN EARTHオタクだったが、そのことはロイ以外には秘密にしていたのだ。

「い、いやあ、そんなことないぜ…… アハハ」

「あ!もしかして、ロイと仲がいいのも!」

「あーー!!も、もうこんな時間じゃないかー!!早く帰らないと!!じゃあな!!」

シュウはぎこちなくそれだけ言い残すと、家に向かって駆け出した。

「シュウ、なんで逃げるんだ?」

キッパーは不思議そうに尋ねた。



シュウは、走りながら幼稚園の頃の光景を思い出していた。


「あっ!オレのキーホルダー返してよ!」

「あーっ!コイツ、アンアースのキーホルダーなんかもってるぞ!」

「オタクだ!オタクー!!」

「え〜ん!!」


それから、シュウは、AN EARTHのファンであることを隠すようになった。

1年後、小学校に上がり、そのキーホルダーと同じものを筆箱につけたロイに出会うまでは……



■□■□■□■□■□■□■□■□■□


       第3話

 『大ピンチ!キッパー戦闘不能!?』


■□■□■□■□■□■□■□■□■□



「はあ、やっと掃除が終わりましたよ……」

放課後、掃除を終えたロイは、シュウと帰るために教室に向かった。

「あれ……?」

しかし、教室には誰も残っていなかった。

「先に帰っちゃったんでしょうか…… 今日こそAN EARTH Xを一緒にやろうって約束してたのに……」


「ロイ……!」

「え!?」

突然、誰もいないはずの教室から、誰かのくぐもった声が聞こえた。

しかし、教室中を見回してみても、人の気配はない。

「……気のせいですか」


「ロイ!!」

「ええ!?」

ロイが教室をあとにしようと振り返ったとき、再び声が聞こえた。

「ここだ!シュウの机のなかだ!」

ロイは、シュウの机の前に行くと、恐る恐る引き出しを開けた。

「キッパー!?」

そこには、黄緑色のUSMが、教科書や他の文房具に混じって置き去りにされていた。


ロイは、USMを取り上げる。

「ありがとう、ロイ。助かったよ」

「いったいどうしたんですか?」

「どうやら、シュウはわたしを忘れて置き去りにしてしまったようだ」

キッパーの声はどこか寂しげだった。


「シュウは帰っちゃったんでしょうか……」

「いや、どうやら友達とサッカーをしに行ったようだ。彼らの前ではわたしも声を出せない。シュウが気が付かなかったのも仕方ないことだろう……」

「ぼくもシュウに用があるんです。一緒に行きましょう」



「おれさまのシュートを喰らえ!!」

ポリコーの放ったシュートが真っ直ぐにゴールに向かっていく!

「シュウ!!」

シュウのチームメイトが叫ぶ。ボールはシュウの真横を素通りし、ゴールインした。

「ハッハッハッ!どうだ見たか!おれさまの最強シュートにビビって手も出なかったようだな、シュウ!」


「どうしたんだよ、シュウ!!」

チームメイトのひとりが、心配そうにシュウに駆け寄ってきた。

「……はっ!わりいわりい!ちょっとぼーっとしてた!もう大丈夫だぜ!」

「ホントかよ?」

「あっ、ちょっとトイレ!」

そういうとシュウはコートを抜けて、校舎に続く小さな階段に向かった。

シュウに向かって手を振るロイに気がついたのだ。


「シュウ!酷いじゃないですか、キッパーを置き去りにするなんて!」

「ごめんごめん!」

シュウはUSMを受け取った。

「大丈夫だ。わたしは気にしていない」

「いや、キッパーは落ち込んでいましたよ!」

「ロイ……」

「いやあ、だって、オレ、AN EARTHとか全然興味無いからさ」


「「ええ〜!?」」


キッパーとロイが声を合わせた。


「……ん?」

ロイはシュウの視線が、ロイやキッパーではないどこかに向けられているのに気が付いた。

視線の先を追ってみると、校庭の端にサロンが座っているのが見えた。


「そういうことですか……」

「実は昨日の下校のとき……」

シュウは、ロイにドッグアイ一味のブルにメモリーバトルを仕掛けられ、結果としてサロンに疑われることになった経緯を話した。

「……それから、ずっと監視されてるんだよ!」

シュウは、サロンに聴こえないように小声で言った。

もっともこの距離では普通に話してもほとんどサロンには聴こえなかっただろう。シュウはそれほど気を使っていたのだ。


「事情はわかりました。でも、USMは持っているべきです。またいつドッグアイ一味に襲われるかわかりませんからね」

「わかったよ」

「ぼくと一緒にいるところをあまり見られると良くなさそうですね。今日はひとりで帰ります」

「ああ、オレもひとりで帰るよ……」



それから、ロイと別れたシュウは、ひとりで校門を出た。

サロンは付いてきてはいないようだった。


「あっ、シュウくんだ」

「キロメ!?」

シュウはキロメに疑いの眼差しを向ける。

「もしかして、サロンに頼まれたのか……?」

「サロンがどうかしたの?」

キロメは不思議そうに首を傾げた。


「ふう、いや、なんでもないぜ!」

「せっかくだから、一緒に帰ろう」

何が"せっかく"なのかはわからないが、キロメなら一緒にいても、サロンに疑われることはないだろうとシュウは思った。

「……まあ、そうだな」


ふたりは並んで歩き始めた。

「そういえば、昨日はなんで早く帰ったんだ?」

「うん、それはねー……」

「見つけたよ!!」


キロメが答えようとしたとき、曲がり角から3人組が現れた。

「出やがったな!ドッグアイ一味!」

「昨日はよくもやってくれたわね!ブルの仇、取らせてもらうよ!」

パピヨンが言った。


「おまえら、バイトじゃなかったのかよ!」

「仲間がやられて黙ってるわけにはいかないからね!」

「無理を言ってシフトを替えてもらったでヤンス!」

「ふたりの思いに応えるためにも、今日こそキサマを倒してやりますぜ!」


3人は、メモリープレイヤーを構える!

「いくよ!」

「「OK、パピー!」」

「「メモリー・セットオン!!」」


『ネコッカムリ!!』

『アゴベル!!』

『フィドル!!』


「「レディ・シュート!!」」

3人のメモリーが一斉に召喚される!


ネコッカムリ、アゴベル、そして、中央に立つのはパピヨンが召喚した新たなメモリー、フィドルである。

ネイティブアメリカン風の衣装を纏った女性の姿で、髪は燃え上がる炎、顔には目元を覆い隠す仮面。

両端に燃え盛る炎がついた銀のバトンを右手に持ち、それを高速で回転させている。


「キロメ!戦えるか!?」

「うん!」


キロメはメモリープレイヤーを構えた。

「レディ・シュート!!」

「ベクターーーッ!!」

キロメが放ったUSMから、身の丈3メートルほどの巨大なロボットが出現する!

赤青金のトリコロールカラーのボディは光を反射して輝き、背中に纏った赤いマントは風を受けてはためいている。


「ベクター!がんばって!」

ベクターは、振り返って頷くと、両腕を前に突き出した。

「ベクターパンチ!!」

ベクターの両腕がフィドル目掛けて射出される!


「避けろ!フィドル!」

「ファイアー!!」

フィドルは、側転で回避!

「フンッ、当たらないよ!……なにっ!?」

ベクターのパンチは、フィドルを素通りし、背後のネコッカムリとアゴベルを同時に吹き飛ばした。

「ぐわあーッ!!」


ふたりを吹き飛ばした両腕は、そのまま引き返してベクターのもとへ戻ってくる。


「キッパー!おれたちもいくぞ!」

「おう!」

「レディ・シュート!!」

キッパーが召喚され、ベクターの横に並び立った。


「キィーッ!良くもやってくれたわね!フィドル!やっておしまい!!」

「ファイアー!!フレイムトルネード!」

フィドルはバトンを体の前に突き出して、高速回転させる!バトンから炎の渦が放たれ、ベクターとキッパーに一直線に迫る!


「ベクター!」

ベクターは一歩身を引いて回避!

スレスレのところを炎が通過していく!

「キッパー、来るぞ!」

「おう!」

キッパーも続けて飛び離れようとするが、突然その動きが止まる。

「くっ!?身体が……」

炎の渦がキッパーを捉えた!

「ぐわあーーーッ!!」

「キッパー!」


「あら、こんなに弱かったの?こんなのにやられるなんて、ブルもマルチーズもだらしないわね。オーホッホッホッ!」

パピヨンが高らかに笑い声を上げ、その横で手下のふたりもニヤニヤと笑った。


「キッパー!どうしちまったんだ!?」

「わからない……!身体に……力が入らないのだ……!」

キッパーはブレードを地面に突き立てて、なんとか起き上がる。


「今がチャンスよ!フィドル、とどめを刺しなさい!」

「ファイアー!!」

フィドルはトーチを振りかざし、キッパーに突撃する!


「ベクター!キッパーを守って!」

「ラジャー!ベクターパンチ!!」

ベクターはフィドルに向かって腕を発射!

しかし、そこへ飛来した弾丸が、その腕を撃ち落とす!!

アゴベルの放ったスナイプショットだ!

「あんたの相手はこっちですぜ!」


ベクターはアゴベルの攻撃を振り切ってフィドルの方へ向かおうとするが、目の前に瞬間移動したネコッカムリが行く手を塞ぐ。

ベクターは、ふたりに前後から挟まれた状態だ。

「パピーの邪魔はさせないでヤンスよ!」


その間にも迫りくるフィドル。キッパーは動くことができない。

すでに燃え盛るトーチがキッパーの目前に迫っていた。


「フレイムトルネード!!」

高速回転するトーチから、炎の渦が放たれる!

至近距離からのフレイムトルネードを喰らえば、ひとたまりもない!


「キッパー!!」

シュウが叫び声を上げたその時!

「グワァーー!」

吹き飛ばされたのはフィドルだ!


「ブラックフォックス!?」

シュウが声を上げた。フィドルを吹き飛ばしたのはブラックフォックスのエナジーミサイルだったのだ。


「ブラックフォックスが、どうしてここにいるんだ!?」

「心配だったので、こっそり後をつけさせてもらいました!」

メモリープレイヤーを構えたロイが塀の影から現れる。

「ロイ!」

「シュウ!とにかくここは逃げましょう!キロメ、手伝ってください!ブラックフォックス!エナジーミサイルです!」

「コーーン!!」

「ベクター!やって!」

「ラジャー!」


「エナジーミサイル!!」

「ベクターパーンチ!!」

ふたりの攻撃が同時に放たれる!


「フン!そんな攻撃、アタシのフィドルには当たらないわ!!」

「ファイアー!!」

フィドルはバックステップで攻撃を躱す!


「そのくらい計算済みです!」

ふたりの放った攻撃は地面に直撃し、あたりに凄まじい土煙が立ち込めた。


「ギャーッ!これじゃあ、何も見えないでヤンス!」

「やつら、最初からこれが目的だったんですよ!」

「キィーッ!!よくも小癪なマネをー!!」


シュウたち3人は、目くらましをした隙きに逃げ出した。

「こっち!」

ふたりの先頭を走るキロメが、門をくぐり1軒の民家へと入っていく。


「ちょ、ちょっと、キロメ!?不法侵入罪ですよ!警察に捕まってしまいます!」

キロメは立ち止まって振り返ると、不思議そうに首を傾げた。

「わたし毎日はいってるけど、捕まったことないよ」

「「ええ〜!?毎日!?」」

シュウとロイが同時に聞き返した。

「だって、わたしのお家だもん」

「なんだ、そういうことか……」


ふたりはキロメの後について、部屋に入った。

「……ここ、ほんとにキロメの部屋なのか?」

シュウが聞いた。

その部屋は一見して女の子の部屋には見えなかった。

本棚には様々なロボットアニメのビデオが並び、机や棚の上にはところ狭しとロボットが並び立っている。

部屋の済に置かれたおもちゃ箱からもロボットの手足が覗いていた。



「そうだよ」

そういうと、キロメは窓際に行ってカーテンの横に並んだ。

「ほら、おそろい!」

たしかに、カーテンの柄はキロメの来ている服と同じものだった。

部屋を見渡すと、ベッドのカバーにも同じものが使われている。


「あっ、そうだ!昨日のボイコット、一緒に見よう」

「「ボイコット?」」

「うん」

キロメはうなずくとテレビの前に座って電源を付けた。

オープニングテーマとともに黒いロボットが変形し、画面にデカデカと『機械戦士ボイコット』というロゴが映し出された。


「昨日…… もしかして、いつも水曜日に先に帰っちゃうのって……」

「うん、ボイコットを見たいから!」

キロメは、それだけ答えると、テレビに向き直って、画面を見つめた。

画面の中で、黒いロボットが怪獣に向けてロケットパンチを放っている。


シュウとロイも、サロンの少し後ろに並んで座ってテレビを見始めた。


「キロメ、ロボットが好きだったんだな。意外だったぜ」

「そう?」

「だって、普通、女の子はこういうの見ないだろ?おれたちに隠さないんだな」

「なんで隠すの?」

「え……? 恥ずかしいとか、思わないのか?」

キロメは振り返ってシュウを見つめた。

「恥ずかしくないよ。好きなものは好きなんだもん」


それから3人はしばらくテレビを見ていた。

日が傾き始めてもドッグアイ一味が現れる気配はなく、その後は何事もなくそれぞれ家に帰ることができた。



「シュウ!わかりましたよ!」

翌朝、ロイは、教室に入るなりシュウに声をかけた。

「なんのはなし?」

「ここじゃあ、話せません。廊下に来てください」


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       AN EARTH

        -P.M.-

     パラレルメモリーズ


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\ハッピー セット!/


「メモリーセットオン!」(発光するメモリープレイヤー)


「いけー!キッパー!」(ゼンマイ走行し、ジョンに衝突するキッパー)


「勝負だ!」(ミサイルを発射するアゴベル)


ハッピーセットにAN EARTHが登場!!


「「レディー!シューート!」」

(メモリープレイヤーを構える子どもたち)


土日はカードが貰えるぞ!

(AN EARTHパラレルメモリーズトレーディングカードゲーム『ザ・カードメモリーズ』全5種類)


※玩具はなくなり次第終了です。

※カードはランダムに一枚もらえます。


\I'm love it!/


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       AN EARTH

        -P.M.-

     パラレルメモリーズ


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ふたりは廊下に出て、あたりに誰もいないのを確認してから話し始めた。

「キッパーが戦えなくなった理由です!」

「わたしが、戦えなくなった理由……?」

キッパーが答える。シュウは、ポケットからUSMを取り出した。


「ええ、ここ数日、じいちゃんと、いままでの戦いの記録を分析しているうちに、メモリーについて新しいことがわかったんです」

ロイは眼鏡に手をかけた。

「その名も"ペアリング"です」

「ペアリング?」

シュウが聞き返した。


「メモリーとそのパートナーであるわれわれメモリーズとの絆の強さ、それがペアリングです。ペアリングが強ければ強いほど、メモリーはその力を発揮することができる。

だから、メモリーとその持ち主には出会う前からの繋がりがあって、似た性質を持つもの同士がパートナーとなるのです。運命的に」


「それと、キッパーが力を失ったことと関係があるのか?」

「おそらく、ふたりのペアリングに乱れが生じているのでしょう。心のつながりを失えば、メモリーの意思を保つことができず、最終的に、メモリーが暴走してしまいます。ジョンのように……」

ロイはうつむいて言った。

「そ、そんな!!なんとかならないのかよ!」


(恥ずかしくないよ。好きなものはすきなんだもん)


「……はっ!」

その時、シュウの頭の中に、キロメの言葉がよぎった。


「ロイ!ありがとう!オレ、ちょっと行ってくる!」

そういうと、シュウはロイに背を向けて走り出した。

「え?ちょ、ちょっと、シュウ!どこに行くんですか!?」



「きゃっ!」

「おっと!」

シュウは、廊下の曲がり角で誰かにぶつかりそうになって、立ち止まった。


「サロン!!」

「シュウ?どうしたの?」

シュウは真剣な表情でサロンを見つめた。

「サロン!どうしても伝えなきゃいけないことがあるんだ!」

「え、えっ!?」

サロンは困惑して一歩後ずさった。

シュウは一歩前に出てサロンの手を掴んだ。

「放課後、体育館の裏に来てくれ!」



「あっ、いましたぜ!」

ブルは、茂みの影から顔を覗かせた。

……少なくとも本人は"顔を覗かせた"つもりであるが、その巨体故に肩や丸まった背中が丸見えだ。

「まったく、校舎のどこにいるのかと思えばこんなところにいたのかい」

ドッグアイ一味は、シュウを探して学校に来ていた。そして、ついに、体育館裏で、その姿を見つけたのだ。


「ん?」

マルチーズは、もう一人、建物の影から姿を表した人影に気がついた。

「あれは、たしか、サロンとかいう小娘でヤンス!こんなところで何やってるでヤンスかねえ?」

「どうでも構わねえ!さっさとあのガキをやっつけてやりましょうぜ!」

「そうでヤンスね!」

ふたりは、メモリープレイヤーを取り出した。

「待ちな!」

「「パピー!?」」

「どうしてです?今がチャンスですぜ!」


「フン、あのガキの顔を見な!」

ブルとマルチーズは言われたとおりに、シュウの方に顔を向けた。

「あの期待と不安の入り混じった表情…… きっと、あのガキは、これから小娘に愛の告白をするつもりなのさ」

「「ええ〜〜!?」」


「ん?なんだ?」

ふたりが大声を出したのが、シュウにも聞こえたようだ。キョロキョロと辺りを見回し始める。


「シッ!おバカ!見つかっちゃうじゃないか!」

ドッグアイ一味は身を縮めて息を潜めた。

「気のせいか……」

シュウは校庭でクラスメイトたちが騒いでいる声だろうと考えて納得したようだ。


「とにかく、いくらターゲットとはいえ、ここで邪魔をするのは不粋が過ぎるってもんだよ」

「「OK、パピー……!」」

ふたりは、声を潜めて答えた。



「シュウ!」

「サロン!」

「なによ、はなしって」


シュウは拳を握りしめると、真っ直ぐにサロンの目を見つめた。

「サロン…… おれは……」

「……」

「おれは、AN EARTHが好きだ!!」

シュウの叫ぶような声が響き渡った。


「……え?」

サロンは思わず口を開けて、固まってしまった。

「「えええええ〜!!??」」

サロンが叫ぶと同時に、ブルとマルチーズも叫んだ。

「シィーッ!!」

パピヨンが慌てて黙らせようとしたが、シュウもサロンもふたりの声など耳に入らなかったようだ。


「話ってそれだけ!?」

「ああ!これだけはどうしても言っておきたかったんだ!」

「ふふっ、ハハハ!」

サロンは急に力が抜けて大声で笑った。


「な〜んだ、そんなことだったのね!大丈夫よ!わたし全然気にしてないし!」

「で、でも、わざわざ、尾行するくらいだし……」

シュウが不安げに少しうつむいて言った。


「尾行?なんの話?」

サロンは、眉をひそめて聞き返した。

「え!?だって、学校にいる間、ずっと近くからこっち見てたじゃねえか!」

サロンは、また少し笑ってから答えた。

「ふふっ、同じクラスなんだし、家が隣なんだから、ずっと一緒にいるのは当たり前でしょ!アンタの勘違いよ!」

「ええ〜!?そうだったのか……!!」


「もう!頭に来た!!」

パピヨンが突然大声を出して、茂みから飛び出した。

「あっ!あんたたちは!」

「ドッグアイ一味!!」


パピヨンに従って、ブルとマルチーズも茂みから出て、パピヨンの左右に立った。

「「怪盗ドッグアイ参上!」」


「よくも、とんだ茶番を見せてくれたね!!」

「茶番だと!こっちは真剣なんだ!!」

そう言い返すシュウの横で、サロンは、吹き出した。

「笑うなよ、サロン!」

「ごめんごめん!」


「小娘!手を出すんじゃないよ!」

「なんだと!?そっちは3人じゃないか!サロンも一緒に戦わなきゃ不公平だぜ!」

パピヨンは、不敵に笑った。

「そうよ!だから、平等に、1対1で戦ってやろうっていってるんじゃないか」


「1対1!?」

「こっちはフィドルだけだよ!それなら文句はないだろう?ブル、マルチーズ、わかってるね?手を出すんじゃないよ!」

「「OK、パピー!」」


(パピヨンのやつ、何を企んでやがるんだ……?)


(さすがパピー!昨日の戦いを見れば、あのガキのメモリーはフィドルには勝てない!1対1なら、他の連中に邪魔されることもない、これで絶対に勝てるってわけですぜ!)


「いくよ!フィドル!レディー・シュート!!」

パピヨンの放ったUSMからフィドルが出現した。

「ファイアー!!」


「シュウ……!」

「大丈夫だ、サロン……」

シュウはUSMを取り出す。


「キッパー!オレはもうおまえのことを恥ずかしいなんて思わない!一緒に戦ってくれ!」

「もちろんだ、シュウ!」


シュウは、メモリープレイヤーを左手に構えた!


「メモリー・セットオン!!」


メモリープレイヤーの側面の"M"の文字が黄緑色に輝き、合成音声がメモリーの名前を呼び上げた。


『キッパー!!』


「レディ!!」


メモリープレイヤーをフィドルに向けて、トリガーを引く!


「シュート!!」


ガキンッ!!

反動が腕を伝わり、全身が衝撃で後ろへと圧される!


メモリープレイヤーから射出されたUSMは風を切りながらスピン!

フィドルの目の前の地面に衝突すると、円を描くように光が広がり、魔法陣が出現し、キッパーが召喚される。


「なんだ…… 全身に力がみなぎっている!」

キッパーの体を金色のオーラが包み込む!


シュウの脳裏にロイの言葉が浮かび上がる。


"メモリーとそのパートナーであるわれわれメモリーズとの絆の強さ、それがペアリングです。ペアリングが強ければ強いほど、メモリーはその力を発揮することができる。"


「これが、ペアリングの力…… オレとキッパーの絆の力だ!!」


「パピー!な、なんか、アイツの様子、昨日と違いますぜ!」

「ええい!怯むんじゃない!フィドル!やっておしまい!!」


「ファイアー!!フレイムトルネェエエエエエエエエド!!」


フィドルの放った炎の渦がキッパーに迫る!

「キッパー!!」

サロンが悲鳴を上げる。


炎はキッパーを直撃した!!


「ハハハッ!これで終わりだよ!!」

パピヨンが高らかに笑い声を上げる。

しかし!

「なにっ!?」


炎の渦の中からキッパーが現れる。

無傷だ!

(ここでオープニングテーマ『Memories 〜レディ☆シュート!!〜』のサビが流れる)


「そんな攻撃、わたしには効かないぞ!」


「そ、そんなバカな!!」

パピヨンが一歩後ずさった。


「シュウ、いまがチャンスだ!」


「ああ!行くぜ、キッパー!」


「「必殺ッ!!」」


キッパーにシュウの姿が重なる!

「「ドロップシュート!!!」」


キッパーは腕をクロスさせてから、大きく左右に開く!

その両腕にブレードが出現し、そのまま黄緑色の光をまとい、フィドルに突進した!


「いっけえええええええ!!!」


「ファイアァアアア!!!!」

断末魔を上げるフィドルを背に、両腕のブレードを振り払った!


フィドルは爆発四散!!


「覚えていろよーーッ!!」

パピヨンはUSMを拾い上げると、他のふたりと一緒に、一目散に逃げ去っていた。



「シュウ!」

「ああ、おまえはオレの相棒だ!これからも頼むぜ、キッパー!」

「シュウ…… もちろんだ!」

キッパーの帽子の下には無表情な目があるだけだが、シュウには確かに彼が微笑んだのがわかった。


「サロン、ごめん!」

シュウはサロンに向き直って、頭を下げた。

「え!?今度はなに!?」

サロンはうろたえて一歩後ずさる。

「いや、サロンのこと信じないで、AN EARTHのこと、秘密にしちゃってて、悪かったな、って……」


「秘密のひとつやふたつ、誰にでもあるものよ」


サロンは、シュウから目をそらして、つぶやくように言った。


「……そう、誰にもね」



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       次回予告!


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いま話題絶頂の人気アイドル、シクスティ!

かわいいよな〜って、新人アイドル、ヴァンピーとデュエットだって!?


クラスメイトもふたりの話題で持ちきりさ!


そんな中、サロンの様子がな〜んか、おかしいんだ。


よし、追跡捜査開始!

オレたちでサロンを助けるんだ!


次回、AN EARTH パラレルメモリーズ!

『追跡作戦!あの子はアイドル!?』


来週も、オレとレディ☆シュート!!



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      またみてね!


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AN EARTH パラレルメモリーズ スパイ03 @1supai03

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