今日の夜空は、いつもより透き通って見える。

 月の光が僕たちを優しく照らしているような、そんな感じ。

 ふと隣を歩いている奈菜ななに、それを共有しようと言葉を紡ぐ。

「なあ、今日は月が綺麗だな」

「っへ!? あ、そっそうだね!」

 なぜか戸惑う彼女を不思議に思って顔を覗くと、街灯と月の光のぼんやりとした明かりの中でも分かるほど、真っ赤に染まっていた。

 ぼそぼそと「月が綺麗ってまさか、いやでもそんなこと私に言うわけないし、でもやっぱり……――」と口を動かしている。

 一体何を思ってこうなっているのだろうか。


「……冬眞とうま、私のこと好きってこと?」


 次にはっきり聞こえた言葉がこれだ。

 そこで盛大な勘違いが起こっていることに気がついた。

「はああぁ」

 月が綺麗って、恋愛の意味もあったんだっけな。

 このあと弁解するのに苦労したのは言うまでもなく、奈菜が悲しい顔をしたのを冬眞は知らない。

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短編集 恋愛編 花空 @popflower

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