狂気の魔法使いと美しき世界

五木史人

狂気の魔法使いと美しき世界

その日、魔法使いの支配が始まってしまった。


支配者になった魔法使いは完全に狂っていた。

でもその狂いは、私にとっては絶賛好都合なのは間違いない。


魔法使いの呪いによって、私は美少女になってしまった。

めっちゃ美少女だ。


魔法使いは完全に狂っていた。

でもその狂いは、私にとっては絶賛好都合なのは間違いない。


私を美少女にするなんて♪♪♪


魔法使いがこちらを伺っているので、

「こんな姿になって、私はこれからどうやって生きて行けばいいの?」

と嘆いて見せた。(もちろん楽しく生きて行くが)


魔法使いはにやけ、私も心の奥でにやけた。


「ふふふ罪人よ、その姿でお前が犯した罪を悔いながら生きるがいい!」


そう魔法使いは私を叱責し、去って行った。


私は自分の姿を確認し再びにやけた。

「美しい」


でも、それが本当の呪いで在ると確信したのは、1週間後だ。


美少女の需要がなくなっていたのだ。

正確には、美しさに価値がなくなってしまったのだ。


美しい少女。

美しい生き物。

美しいデザイン。

美しい生き方。

美学。


人々は、それらに価値を感じなくなっていた。

そして、世界から美しいものが少しずつ消えていった。


この世界でただ1人、美しさに憧れ欲している存在となった私は、美しさが失われていく世界に、狂気した。



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狂気の魔法使いと美しき世界 五木史人 @ituki-siso

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