言うほどご存知でもなかった

 センター試験一日目の朝、家で朝食を済ませ会場に向かういち受験生の、徒然とした独白。
 独白、というよりは思考や心境をそのまま活写した文章といった方が近いかもしれませんが、まあなかなかに独特な味わいのお話です。
 とにかくもう、話がくどい。普通なら説明の必要のないことを細々説明して、出てくる言葉の定義を逐一詳らかにしないことには先に進めない、なんだか科学哲学か何かの教科書のようね、と一瞬そう思いかけたもののちょっと違う。語の定義というほど厳密ではなく、どうも場当たり的というかなんだか恣意的というか、適当に目についたものから手当たり次第といった様子で、つまりこの主人公が一体〝何〟でどうしてこうなっているのか、結局判然としないという以前にもうそんなことどうでもよくなってくるような、なんとも不思議な感覚がありました。煙に巻かれる、というのとはちょっと違うというか、それを三回りくらい大きくした感じ。
 おそらくはこの主人公、人のふりをしているだけの人ならざる何者かなのだと思うのですが。ただ個人的な趣味としてはヒトであって欲しいというか、認知機能の独特な人だったら素敵だなあと思いました。