【R15】子どもの名前に願いを込めて【なずみのホラー便 第81弾】

なずみ智子

子どもの名前に願いを込めて

 初めての我が子を胸に、亜子はこれ以上ない幸せに包まれていた。

 夫の真輔は、息子の出生届を出しに行ってくれている。「子どもの名前は俺が名付ける。極めてシンプルな名前にするぞ。どんな名前かは出生届を出した後のお楽しみだ」と。

 亜子は、真輔が考えてくれたならどんな名前でもいいと思っていた。

 モテモテの真輔が、冴えない自分を妻に選んでくれたのだ。

 今時、古い考えではあるも、彼に逆らうなんてとんでもなかった。彼に一生従っていくつもりだったのだが……


「な、なんで……その名前にしたの?! 役所の人には止められなかったの?」

「俺の願いを込めた名前だ。息子には、俺以上にモテまくりでヤリまくりの人生を歩んで欲しいからさ」

「だ、だからって……!」

「シンプルに”女の大事な所そのもの”を名前にしたろ。あ、もしかして三文字じゃなくて、最初に”オ”をつけて四文字にした方が良かったのか?」


 亜子は、真輔に渾身の右ストレートを喰らわせていた。産後であったにもかかわらず、それは凄まじい力であった。


 やはり”母は強し”か。

 その日のうちに離婚届を提出した亜子は、”一日でも早く”と息子の改名手続きをも進めているところである。



――fin――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【R15】子どもの名前に願いを込めて【なずみのホラー便 第81弾】 なずみ智子 @nazumi_tomoko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ