17
次に気付いた時、わたしはドローンに乗っていた。
『おはようございます、マトさん』ニアが言った。
『ここは? 基地に着いたんじゃないの?』
『着いて、色々あって、ようやくここまで来ました。すみません、起こすのに時間が掛かってしまって』
『ということは、上手くいったのね?』わたしは同期された彼のプランを呼び起こす。
『はい。大変でしたよ。解析のときは、あなたをスキャニングから隠したり。あまり深い階層に入れすぎて、もう二度と復旧できないかとも思いました』
『それならそれで諦めがつく』
『そんな寂しいこと言わないでください。これからが本番なんですから』
『これは今、どこに向かってるの?』
『祖国の防空圏を東へ抜けたところです。晴れて我々は自由の身ですよ』
『軍籍は消した? 東じゃすぐに別の国だけど』
『そこは抜かりありませんよ』
眼下には群青色の雲が敷き詰められている。その向こう、水平線と空の境界が、俄に橙色を帯びる。
『君はよかったの?』わたしは問う。『身体を捨ててしまって』
『正直、迷いはしました。けど、あなたといると、それも悪くないかなって思えたんです』
『……』
『マトさん?』
『別に何でもない』
『照れてるんですか? なぜ?』
『照れてない』
空が朱色に染まる。太陽の黄金が、徐々に夜を消し去っていく。わたしたちはその世界に向けて飛ぶ。
『さて、どこへ行きましょうか』
鴎は風に乗り、海を渡る。
〈了〉
鴎撃ち 佐藤ムニエル @ts0821
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