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 次に気付いた時、わたしはドローンに

『おはようございます、マトさん』ニアが言った。

『ここは? 基地に着いたんじゃないの?』

『着いて、色々あって、ようやくここまで来ました。すみません、起こすのに時間が掛かってしまって』

『ということは、上手くいったのね?』わたしは同期された彼のプランを呼び起こす。

『はい。大変でしたよ。解析のときは、あなたをスキャニングから隠したり。あまり深い階層に入れすぎて、もう二度と復旧できないかとも思いました』

『それならそれで諦めがつく』

『そんな寂しいこと言わないでください。これからが本番なんですから』

『これは今、どこに向かってるの?』

『祖国の防空圏を東へ抜けたところです。晴れて我々は自由の身ですよ』

『軍籍は消した? 東じゃすぐに別の国だけど』

『そこは抜かりありませんよ』

 眼下には群青色の雲が敷き詰められている。その向こう、水平線と空の境界が、俄に橙色を帯びる。

『君はよかったの?』わたしは問う。『身体を捨ててしまって』

『正直、迷いはしました。けど、あなたといると、それも悪くないかなって思えたんです』

『……』

『マトさん?』

『別に何でもない』

『照れてるんですか? なぜ?』

『照れてない』

 空が朱色に染まる。太陽の黄金が、徐々に夜を消し去っていく。わたしたちはその世界に向けて飛ぶ。

『さて、どこへ行きましょうか』

 鴎は風に乗り、海を渡る。


〈了〉

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鴎撃ち 佐藤ムニエル @ts0821

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