彼が忍者採用試験を「不合格」となった理由【なずみのホラー便 第80弾】

なずみ智子

彼が忍者採用試験を「不合格」となった理由

 忍者になるという幼き頃からの夢を叶えるため、清蔵は日々努力してきた。

 忍者育成学校でも常に主席の彼だが、忍者採用試験は「不合格」であった。

 解せぬ、これは解せぬ。

 学科でも実技でもしくじってはいない。となると面接か?

 

 清蔵は面接官の家を突き止め、忍び込んだ。仕掛けられていた罠も難なく突破し、寝室にまでやってきた清蔵に、面接官――三歩歩けば顔を忘れてしまうほどに特徴というものが皆無な老人――は驚いていた。

 面接官は清蔵の顔と名前は覚えていたようだ。

 不合格の理由を問う清蔵に、面接官は答える。


「黒装束に身を包み手裏剣を打つだけが忍者ではない。忍者はその名の通り”忍びの者”じゃ。隠密活動時に周りから浮き上がることがあってはならぬ。世にも稀な美丈夫のうえ背丈も周りの者より頭一つ分高いお主は、お主が考えている以上に目立っておる。敵に顔や背格好を一発で覚えられてしまう者を忍者として採用するわけにはいかぬのじゃ」


 膝から崩れ落ちた清蔵。

「……俺はずっと努力してきた。なのに、そんな理由で……己の力ではどうすることもできない身体的な理由で夢を叶えられぬとは……」

「気の毒だが、それが世の中というものじゃ」



――幕――

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