第11話 アレ? 俺ってばエロゲの悪役!?

 艦獄ダンジョンシップは海の上を進むだけでなく、空を飛んだりこことは違う世界へ行き来する機能を持っている。そして世界を分ける「壁」の中を進む感覚は、海の中を潜って泳ぐのと似ているような気がした。


 周囲から物理的な圧力を受けながらただひたすらに闇の中を進み、やがて光が見えてその光の中を出ると、そこは高層ビルが建ち並ぶ都市、仁本にほん雹庫ひょうご降戸こうべ市の上空であった。


「こ、降戸だ……やっと帰ってこれた……!」


 艦獄の甲板に立ち久しぶりの故郷の町並み見た俺は思わず呟き、気を抜けば泣いてしまいそうだった。


 ここまで本当に長かった。メイドもののエロぼ……紳士の参考書を買った帰り道に龍骨が宿り、艦獄長ダンジョンマスターとなって異世界ヴィーマーに転移したあの日から早一年。今思えば本当に色々な出来事があった。


 転移した初日は艦獄狙いのアルテー達に危うく襲われそうになり、二日目にはその彼女達から俺の艦獄長としての力が欲しいという理由で逆レ……その、別の意味で襲われた。


 しかしこんなのは俺が経験した出来事のほんの一部にすぎない。


 アルテー達の部族アレネスの拠点である島に行くと、そこでは別の島にあるとある王国の侵攻を受けていて、俺もなりゆきで彼女達と一緒に侵攻をしてきた王国の軍隊と戦うことになったのだ。王国の軍隊と戦うことで俺は、アルテーの母親であるアレネスの族長を初めとするアレネス全ての戦女達に認められたのだが、問題はその後だった。


 アレネスは代価と代わりに周辺の島々を守ったり、怪しい船やモンスターを襲う傭兵と海賊を合わせたような部族で、その為に周りからの評判というのはとても大切らしい。


 アレネスの名前を守るためにアルテーを初めとするアレネスの戦女達は王国への反撃を決意。アルテー達、そして彼女達を艦獄に乗せて運んだ俺は王国のある島に到着したのだが、そこで俺達は偶然にも王国に反旗を翻そうとしている勢力と出会うこととなる。


 そしてそのまま俺とアルテー達は反対勢力と共に王国に戦うことになった……というのがこの一年間で俺が体験した出来事だ。


 王国との戦いのお陰で艦獄長の力を使いこなせるようになり、こうして帰れるようになったのだが本当に濃い一年間だった。文章にしたらライトノベルの一冊や二冊は書けるぞ?


「凄いな、これは……! ここがリュウトの故郷なのか?」


 俺が降戸の街を見下ろしながら今までの出来事を思い出していると、同じく降戸の街を見下ろしたアルテーが驚きの表情となってそう言ってきた。


 今この艦獄の甲板上には俺以外にアルテーを含めた十人以上の女性達の姿があった。彼女達は全員ヴィーマーで出会った戦女で、そして俺の「眷属」である。


 眷属とは艦獄長から何らかの力を与えられる代わりに、艦獄長と共に魔宝を守る絶対服従の部下のことである。


 俺はヴィーマーに転移して半月くらい経ったある日、ある事故……事故? まあ、とにかくある出来事でアルテーを初めとするアレネス全ての戦女達を眷属にしてしまい、他人を自分の眷属にする方法を知った。


 今艦獄に乗っている俺の眷属となった女性達はほとんど、というか約二名を除いてアレネスの戦女達だ。そしてここにはいない残りのアレネスの戦女達は、今頃ヴィーマーで俺が与えた眷属の力を使い大暴れしていることだろう。


 まあ、そこはいいんだ。アレネスの戦女達も眷属の力でパワーアップできたと喜んでいたし、俺も恐竜以外で一緒に艦獄を守ってくれる美人な仲間ができて嬉しいし。


 ただ彼女達には一つある問題があった。


「ん? どうした、リュウト?」


「いや……。その格好、寒くないか?」


「大丈夫だぞ。私達戦女は痛みだけでなく熱さや寒さにも強いからな。むしろ涼しくて気持ちいいくらいだ」


 俺の質問にアルテーは「素肌の上に着たエプロン」に触れながら答えた。


 そう、アルテー達にある一つの問題点。それはアルテーを初めとする、俺の眷属となった女性達の格好のことで、俺は先程素肌の上に着たエプロンと言った。



 そう! つまり「裸エプロン」ということだ!



 ……………いや、違うんですよ?


 アルテー達の裸エプロン姿は、俺が与えた眷属の力の使用に関係していて、決して俺が強要したわけじゃないんですよ?


 とにかく、今のアルテー達の姿を誰かに見られでもしたら、俺の社会的信用は死に絶えるだろう。


 それにしても異世界で暮らしていた巨乳で元ビキニアーマーの美女美少女達を、不思議な力で更にエロい格好をした部下にするだなんて……アレ? 俺ってばエロゲの悪役!?

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