第6話 夢の世界なのか!?

「こことは違う異世界。そして艦獄ダンジョンシップ艦獄長ダンジョンマスターか……。中々不思議な話だな」


 恐竜の正体が分かり、とりあえず大人しくしているようにと恐竜に言い聞かせた後、俺はアルテー達に自分が異世界から来た事とその理由を説明した。最初はとても信じられないといった顔をしていたアルテー達だったが、スマートフォンや財布にあった通貨を見せることで納得してくれた。それでもまだ半信半疑の域を出ていないのだが、それでも上出来と言えるだろう。


「リュウト。この艦獄とかいう船はお前以外いなくて、お前が死んだらもう動かなくなるのだったな?」


 アルテーの言う通り、艦獄は艦獄長が竜骨によって与えられた「牢」の力であり、艦獄長が死んでしまえばその機能は全て失われて単なる艦になってしまう。


「そうだけど、どうかしたのか?」


「うむ。私達は最初、この船を奪うために船を動かすのに必要な人間以外全員殺すつもりだったのだ。しかしいざ船に乗り込んでみるとそこの竜のせいで何も出来なくてな。だがリュウトの話を聞くと何も出来なくて逆によかったようだ。ハハハッ!」


 俺の質問にアルテーは、俺の隣で座っている恐竜を指差して笑いながら言うが、こちらとしては全く笑えなかった。


 笑いながらなに物騒なことを言っているの、この人? というか俺ってば、恐竜がいなかったらアルテー達に殺されていたかもしれなかったの? さっきから恐竜がアルテー達を注意深く見て警戒しているのもそれが原因かよ。


「へ、へぇ……。そうなんですか……。じゃあ、今度は俺から色々聞いてもいいか?」


 俺が知らないうちに命の危険にあっていたという事実に頬をひきつらせながら聞くと、アルテーはそれに首を縦に振ってくれた。


「ああ、構わないぞ。それで何を聞きたい?」


「まずはこの世界のことを教えてくれ」


「この世界は『ヴィーマー』と呼ばれていて、広大な海に無数の島があり、そこに人々が暮らしている世界だ。島によっては文化が暮らしも違っているのだが、私達も全ての島の暮らしを知っているわけではない」


「いや、俺もそこまで知りたい訳じゃないからいいよ」


 それにしてもヴィーマーか……。やはり仁本と交流がある七つの異世界とは違う未知の異世界か。……クソッ、これはいよいよ艦獄の使いかたをマスターする以外、元の世界に返る方法がなくなったな。


 ネットにあった艦獄長となった人の体験談によると、「牢」の力である艦獄は多機能である分、同じ三種の力トリプルである「剣」の力と「鞭」の力よりも使いこなすのに時間がかかるらしい。しかし艦獄が艦獄長の力の一部である以上、時間がたてば頭の中で命じるだけで動かせるようになるそうだ。


 俺達が乗っている艦獄は今その動きを止めている。これは俺の「この場でアルテー達の話を聞きたい」という考えを艦獄が感じとって応えてくれているからだ……と思いたい。


 こうしている間にも艦獄を操れるように成長しているはずだと自分に言い聞かせて俺はアルテーに次の質問をすることにした。


「次の質問をするぞ? アルテー達の部族アレネスというのは一体どんな部族なんだ?」


「私達アレネスはここから離れたところにある島を拠点とする『戦女』だけの部族だ。代価と引き換えに拠点の近くの島の人々をモンスターや海賊から守ったり、外からやって来た見るからに怪しい余所者を襲ったりしているな」


 つまり傭兵と海賊が一つになった部族みたいなものか? 聞いた限りだと手当たり次第襲っているわけじゃないけど、俺の場合はこの艦獄のせいで「見るからに怪しい余所者」として襲われかけたわけか。


 アレネスという部族について大体だが理解できた俺は最後の質問……アルテー達を見た時から気になっていた疑問を彼女に聞いた。


「最後の質問。君達は一体何者だ? 戦女というのは何なんだ?」


 アルテー達、ビキニアーマー姿の美女美少女達がこの艦獄に乗り込んで来た時、俺は驚くのと同時に何故男がいないのだろうと疑問を感じた。


 アルテーは最初、自分達はこの艦獄を奪いにきたのだと言った。そういった荒事なら男もいた方が有利な筈なのに、彼女達の中には男が一人もいない。まあ、ここが地球の常識が通じないことがある異世界だからとか、たまたま男がいなかったからだとか言われればそれまでだが、俺はアルテーが言っていた「戦女」という単語にその答えがあるのだと思う。


『『………』』


 俺の質問にアルテーを初めとするアレネスの女性達は全員、驚いたような呆れたような表情となってこちらを見てきた。


「? 一体どうしたんだ?」


「……リュウト。お前が異世界の人間だと言うのはどうやら本当のようだな。まさか戦女を知らないとは。いいか? 戦女というのは最高の戦士にも母体にもなれる存在で、ヴィーマーの女は十人に一人はこの戦女だ」


 最高の戦士にも最高の母体にもなれる存在? 一体どういうことだ?


 アルテーの言っている意味が分からず俺が内心で首を傾げていると、それを察してくれた彼女は戦女の説明をしてくれた。


「戦女は全員が怪力の持ち主で体は鋼よりも硬く、誰に教わることなく剣や槍といった武器を使いこなす。そして男と子作りをすれば一度で子供を孕み、大きく出の良い乳は丈夫な子供を育てる。だから最高の戦士にも母体にもなれる存在とされている」


 …………………………!?


 アルテーから戦女の説明を聞いた俺は雷に撃たれたかのような衝撃を受けた。


 全員が怪力で武器の達人だからどんな武器も使えて、体が鋼より硬いから防具はビキニアーマーで充分。しかも子供を育てるために胸は必ず巨乳に育つ……! そんなのまるで漫画やゲームに登場するエッチな女戦士そのものじゃないか!?


 女性の十人に一人が戦女だなんて、異世界ヴィーマーは夢の世界なのか!?

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