第5話 恐竜? それともドラゴン?

「ビキニアーマー? 何だ、それは?」


 俺の呟きに異世界の住人達の一人が首を傾げて聞いてきた。


 おおっ、言葉が分かる!? これは助かる。異世界同士の言葉は案外似通っているからコミュニケーションが取りやすいって話、あれ本当だったんだな。


「もしかして私達の鎧のことか? これは私達の部族に伝わる『戦女せんじょ』の鎧だ」


「………!?」


 俺の呟きに反応した異世界の住人の女性が自分の鎧を指差しながら説明をして、それを聞いて彼女の姿を見た俺は、今日で何度目になるか分からない驚きに目を見開いた。


 外見から見た年齢は十六、七歳くらい。肌は健康的な褐色で、髪は光を反射するような綺麗な銀色。そしてビキニアーマーを「窮屈だ!」と全力で主張している爆乳。


 ビキニアーマーの美少女、褐色の肌、銀髪、爆乳。


 何だよこの属性のメガ盛りは!? こんなのアニメとかだったら、ヒロインか色物キャラの二択しかないだろうが?


「私はこの周辺の島々を守る部族『アレネス』の族長の娘、アルテーという。それでお前の名前は?」


「あ、はい。俺は玉国龍人。龍人が名前で玉国が家名です」


「タマクニリュウト、か。変わっているがいい名前だな。ではタマクニリュウトよ、そろそろ『アレ』を大人しくさせてくれないか?」


 ビキニアーマーの銀髪美少女、アルテーが名乗ったので俺も名乗り返すと、アルテーはそれに頷いてから俺の背後を指差した。


「アレ? アレって一体……うおっ!?」


 アルテーが指差した先、俺の背後にいたのは一言で言えば「恐竜」だった。


 大きさは馬より少し大きいくらいで、外見は何かの映画で見たティラノサウルスに似ていた。体の色は黒っぽい青、後ろ脚には鉤爪が生えており、頭部の左右には恐竜にはないドラゴンのような角が見えた。


 え? 何アレ? 恐竜? それともドラゴン?


 本当に何なの? あんな怖いヤツ、この艦獄ダンジョンシップに乗っていたっけ? だとしたらよく今まで襲われなかったな、俺!?


「あの……あのモンスターは一体何なんですか?」


「それは私が聞きたいのだがな? この船に乗った瞬間から、そして今も私達にだけ殺意を向けてきていて、冷や汗が止まらないのだが? ……あの竜、かなり強いぞ」


『『………』』


 俺の言葉にアルテーがそう返すと、彼女と一緒に艦獄にやって来た異世界の住人達、ビキニアーマーの美女美少女達も揃って首を縦に振った。


 でもアルテー達にだけ殺気を向けているってどういう事だ? 俺は殺気なんて感じられないけど、それって一体……ん?


「……」


 俺が内心で首を傾げていると、ドラゴンの角を生やした恐竜は俺のところへやって来て、その後まるでアルテー達から守るように俺の前に立った。


「俺を守ってくれているのか? でも一体どうして……って、これは?」


 そこまで言ったところで俺は自分の足元に何かが落ちていることに気づいた。それは俺が「剣」の力で作り出した卵で、卵は割れて中身はみあたらなかった。


「お前……もしかしてこの卵から生まれたのか?」


「……」


 俺が思わず恐竜に話しかけると、恐竜はこちらの言葉が分かっているように小さく頭を下げてみせた。


 マジかよ? じゃあこの恐竜は俺の「剣」の力で作り出した卵から生まれて、だから俺をこうして敵か味方かよく分からないアルテー達から守ってくれているってこと?


 恐竜の正体とその行動の理由を理解出来た俺は、恐竜に対して強い感謝を覚えるのと同時に罪悪感も抱いた。


 恐竜、本当にありがとう。そしてごめんなさい。お前のことを何の役にも立たない能力扱いした挙句、食べようとして本当にごめんなさい。

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