奪われた青春。彼らの思いはここにある。

短編を募集にかけた自主企画にて応募され、16000文字という結構長めな作品が目に留まり、読みました。

起承転結がはっきりとした作品、というよりは実話のようなリアリティに満ちた作品です。
確かな文章のメリハリがあって、読みやすい感じがして、お勧めできます。
特に、縦書き表示にして読むといい感じでした。

そして、何よりも、今を生きる現役にしか書けない作品であり、僅かな光をタイトルに掲げる通り、暗闇の中に灯る小さな光が読者にも伝わると思います。

コロナによってすべてを奪われ、失意のもと、無為な日々を送る主人公のもとに、友人たちが駆け寄り、互いの思いを確かめる構成がとても素晴らしいです。

作中に登場する少年――直輝
彼が犯してしまった一年前の失敗を取り返すチャンスさえくれないという、忸怩たる思いは察するに余りありますね。

校長の無責任ともいえる言葉に反感を覚える主人公・涼助がとても人間味があっていいなと思えました。

最後に、作中で最も印象に残った描写を残して、レビューを終えたいと思います。

 諦める必要なんてないんだ。
 下を向いたら、虹は見つけられないだろ。

変わった主人公・涼助のこれから歩む道に想いを馳せたい方、ぜひ読んでみてください。きっと後悔しないと思います。