後日談「完」
夏休みの後。
こんな大会が!?
怪奇!出没したヌエを仕留めろ!
ヌエとは?
頭はサル。
胴はタヌキ。
尾はヘビ。
手足はトラで。
トラツグミのような声をしている珍獣。
太古のむかしにも実在したとも言われている。
環奈。
「一応は害獣だから。」
「不気味だけれど。」
「捕獲すればかなり有益なんだって。」
「それで。」
「賞金まである。」
心玖。
「おもしろそー。」
麻友。
「手柄って奴ですね。」
渚沙。
「やるなら荷物持ちに徹するわ。」
「魔力が枯渇して倒れそう。」
環奈。
「お大事に。」
「しばらく使わないでね。」
渚沙。
「別の分野で貢献してやるわ。」
環奈。
「さて。」
「ヌエを倒しに行きたいと思います。」
「少し野山に入ります。」
麻友。
「装備が必要です。」
「猟師は獲物ばかり見て。」
「山全体は見てないと言いますし。」
環奈。
「大会だから。」
「捕獲したらお手柄。」
「一攫千金の捕獲作戦。」
「準備開始!」
学校は通常の授業。
正解を置かず。
答えも無く。
リベラルアーツ式の教育は。
「問い」が多い。
環奈。
「答えというものを頭の中に持ってしまうと。」
「それを基準に考える事しか出来ない。」
「まさに奴隷。」
心玖。
「今の世の中。」
「ひとつの正解は役に立たないよ。」
「臨機応変。」
渚沙。
「むかしは答えを徹底的に刷り込んで。」
「それを基に考えるような思考パターンを作らせたとか。」
心玖。
「自分の見解がひとつもない。」
「こういうことになりました。」
環奈。
「自分の見解がひとつも無いなんて。」
「ロボットみたい。」
麻友。
「そうなると人工知能の方が役に立ちます。」
環奈。
「答えを刷り込まれると。」
「過ちを指摘しても。」
「答えとは違うからと言って。」
「説得しても効果は無いよ。」
「そこらは新興宗教と同じだよね。」
心玖。
「人を信じ過ぎてるんだよ。」
麻友。
「人間なんてそんな程度です。」
渚沙。
「まあそれで。」
「自分たちが愚か者であったと判明して。」
「自分たちの方が間違っていたと。」
「謝罪したようなもんだけれど。」
心玖。
「多いから正しいとか。」
「公だから?」
「凡人の社会だから。」
「正しい訳が無かったよね。」
環奈。
「凡愚の社会では。」
「愚かなこともまかり通りますが。」
心玖。
「道理はすべてを支配する。」
渚沙。
「結局は屈する。」
麻友。
「彼らは靴を舐めた。」
「愚者らしい結果でした。」
彩葉。
「やっほ。」
「大会に出るのなら競争になるかも?」
環奈。
「ハンティング勝負になりますか。」
彩葉。
「条件はフェア。」
「おいしい話だから。」
「頑張ってね。」
三姉妹で訪問するのは。
彩葉ちゃんだけになりました。
期間終了ってことです。
彩葉ちゃん退場。
環奈。
「このあと作戦会議をします。」
部室。
出没が確認された範囲を捜索することに。
日曜日に実行。
野山の中。
環奈。
「杖で足元を叩いていれば。」
「ヘビは逃げていく。」
麻友。
「コンパスもあります。」
「ウェブポイント1を通過。」
渚沙。
「ピクチャーはクリーン。」
心玖。
「何か発見。」
心玖ちゃん。
クロスボウを取り出して。
射撃。
300メートル先の虎に命中。
こっちに暴走してくるものの。
環奈ちゃんは強引に避けて。
麻友ちゃんが撃ち殺しました。
渚沙。
「あらま意外な獲物。」
麻友。
「剥ぎ取りは任せてください。」
環奈。
「こんな所までトラがいるなんて。」
心玖。
「ヌエに追われてここまで追いやられたのかも。」
環奈。
「虎を倒すのはステータスだから。」
「とりあいず持ち帰ろう。」
朝から山に入っても。
痕跡だけで。
見つかりませんでした。
諦めて退却。
山道の中央にヌエ。
全員フリーズする。
棒立ちですからね。
心玖。
「えい。」
クロスボウは避けられた。
麻友。
「少し敏捷性があるみたい。」
環奈。
「覚悟しなさーい。」
環奈ちゃん突撃。
激しく暴れるヌエ。
バックステップやサイドステップで器用に回避して。
切り刻む。
一撃ずつ入って。
ヌエ逃亡。
ハンターがやってきて。
取り合いになってしまう。
環奈。
「おおっと。」
「よろしくない展開。」
渚沙。
「深追い無用。」
仕方がないので。
高速で逃亡したヌエは放置。
帰路に。
朝から山に入って。
もうすぐ夕方。
心玖。
「あれかなー?」
心玖ちゃんが再びクロスボウ。
500メートル先のヌエの急所にヒット。
ヌエ死亡。
環奈。
「これはこれは。」
「みくちゃんやりますねー。」
心玖。
「自分で撃つと百発百中。」
麻友。
「小さな個体です。」
「運べそうですよ。」
渚沙。
「この袋に入れて持ち帰りましょう。」
環奈。
「もう集落の傍だから。」
「余裕があるよ。」
ヌエを持ち帰り。
市役所まで。
ゲームマスター。
「なんと!もう仕留めたのですか。」
環奈。
「ついでに虎も仕留めているよ。」
ゲームマスター。
「は?虎!?そんなものまで!?」
麻友。
「トラの毛皮です。」
ゲームマスター。
「よくあんな試練みたいな猛獣。」
「倒せたなあ。」
「ヌエも一匹。」
「素晴らしい。」
「まだ大会も中盤。」
「暫定一位です。」
環奈。
「よし。」
「このままのペースで。」
次の休日も。
野に入りますが。
確認された個体のうち。
既に2匹仕留められて。
残りは2匹。
野山。
戦いに決まった型はありません。
水の流れのように変化し。
地形に沿います。
この日は収穫なし。
と思いきや。
近くに熊が居て。
不意討ちして殺しちゃいました。
環奈。
「ハンターを呼んでお肉をあげちゃおう。」
「熊の爪と顔の一部だけは持って帰ろう。」
麻友。
「剥ぎ取り箇所は任せてください。」
心玖。
「食用の動物はすべて食べても良い。」
「神の規則。」
「熊も慣れてしまえばこんな感じ。」
麻友。
「凄腕の猟師はけっこう簡単に仕留めますからね。」
環奈。
「剣だと難しい相手では無いなー。」
渚沙。
「古代ローマで熊や虎は剣闘士の良い相手だったわ。」
「ほとんどは剣闘士の勝利。」
「ローマ皇帝は熊と虎を150匹殺したとか。」
心玖。
「猛獣ってパターンを読まれると弱いんだよ。」
「あと。」
「急所を狙えば簡単に死んでしまう。」
「防御さえ出来れば勝ったも同然。」
環奈。
「猛獣より人の方が強いんです。」
「ヌエはもういないのかな?」
心玖。
「痕跡はあるけれど。」
「2キロ先でハンターが撃っちゃった。」
「最後の1匹なんじゃない?」
環奈。
「そっかー。」
「もうちょっと捜索してから。」
「退却しよう。」
ヌエは本当に全滅したらしく。
市役所にはハンターの集い。
ゲームマスター。
「は!?今度は熊を殺した!?」
環奈。
「チャンスだったので。」
「思い切って殺っちゃった。」
ゲームマスター。
「そんなにあっさり?」
「凄腕だわ。」
環奈。
「そうですか?」
大会は。
それぞれヌエを1匹ずつ。
全員に商品が贈られましたが。
わたしに何か通知が来ました。
法皇様が新人賞をくれるそうです。
家にて。
小十郎。
「かんなもやるようになった。」
「自分の力でやったのかな。」
「ならばなおさら賞賛に値する。」
環奈。
「自分からやってみましたら。」
「案外すんなり行きました。」
「自分なりの女性を追い求めたら。」
「もうここまでになったんですね。」
母親。
「立派になったわあ。」
「これからも精進しなさい。」
小十郎。
「多少の力を得たくらいで。」
「うぬぼれていては半人前。」
「ここからが大事だぞ。」
環奈。
「確かに。」
「序章に過ぎないものだと思っています。」
宮殿に出かけました。
法皇様と謁見。
綺麗な作りの大聖堂。
新人賞が贈られ。
法皇様と記念撮影。
メディアも環奈ちゃんを報道し。
もっとも有望で有能な女の子であると。
評判となりました。
怪鳥を仕留めたチャレンジや。
王国祭でルプス相手に勝利したことなど。
新人賞が相応しいと判断されて。
すべてが認められて。
公明正大。
法皇様のお食事会に参加して。
帰宅。
これを記しました。
参加したみんなは記念品が授与され。
大会もいい具合に終了。
生きたままの捕獲は出来ませんでしたが。
貴重な資料であるヌエの死骸は手に入ったと。
喜ぶ研究員。
夏休みが終わってから。
いつもの日常に戻りましたが。
すべてが変化していて。
わたし達はすっかり新しくなって。
わたしの記録は。
黄金色の想い出。
女史として名を馳せた今。
勇猛でデンジャラスな女の子であったと。
自分でも思っています。
これはひとつの断片。
わたしの最高潮の時節での出来事。
そして現在に繋がる。
重要な足掛かり。
女史として。
今日も「女性史」を語り。
最近ようやく。
女性の世がはじまりました。
END
Over the World Wall フロネシス @phronesis
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