想里愛ちゃんと真樹くん

めぐろまさき

隣のあの子

1話 隣のあの子


真樹の心の声「ここは春日山桜中学校。僕は今年から1年生になる。特に何も無く小学校を卒業して中学校へ入学した・・・今年こそはクラス替えもあるし中学デビューして彼女を作るぞ!」


僕は今登校し正門をくぐりクラス替えの掲示板を確認する。僕は・・・2組で教卓から見て右奥の一番後ろの席だ。僕の座席から見て横と縦が女子で斜めが男子と言う配列だ。僕は附属のエレベーター式で行く中学校ではなく家から近い中学校を選んだので小学校で一緒だった生徒は一人も居ない。扉にも貼られた席順を確認して緊張しながら1-2の扉を開く。おそらく小学校からの付き合いのグループがいくつか形成され話をしている。僕もこのクラスに馴染めるだろうか。朝礼の時刻が近づき続々と生徒で席が埋まっていく。何かの紙を先生が列ごとに枚数分配っている。今日一日のスケジュールだ。


真樹「あれ、1枚余ってる」


想里愛「あれ、あたしの分が無いよ~」


真樹「あ、こっちに余ってたみたい~」


想里愛「あ・・・ありがとう♪」


ぎこちない表情を向ける隣の女の子に紙を手渡す。まだ初日だから仕方ない。言うて僕も似たような表情で渡していたかもしれない。しかし必要以上にその事を気にしても仕方が無い。ふむふむ・・・この後すぐに全校集会で先生方の挨拶か。1組の移動が済んだようだ。用意したノートの入ったカバンを机の脇にかけて先生に先導されて教室から廊下へ出る。体育館で校長先生の入学祝いの言葉を頂き先生方の紹介を聞き終え教室へ戻る。


平田 紅葉「ご入学おめでとうございます!この時間は私と皆さんの自己紹介をしてお昼まで校庭で親睦会をして午前で解散になります。授業は明日から始まります。」


先生の自己紹介が始まる。名前の影響か趣味で山巡りをしているらしい。健康にも良いからとクラスの皆にも勧めて話を締めた。次の僕達は名前順かと思いきや逆回りで、名前の末尾の方から自己紹介が始まり緊張が高鳴る。お、さっそく隣の女の子の自己紹介が始まる。そういえば隣のあの子、どこかで見たことあるような・・・。


優樹 想里愛「ゆうきそりあです。小学校の3年生の時に親の転勤でこちらから離れてたけど最近また越してきました。おすすめのお店を紹介してくれるお友達募集中です!よろしくお願いします。」


間違い無い。同じ小学校だった想里愛ちゃんだ。この5年間ですごく大人びたなあ。これは言われないと気付かないわけだ。僕も自己紹介で彼女に伝わるように話さなければ・・・。そうだ、出身小学校の名前を出せば良いんだ!


優樹 咲桜里「ゆうきさおりだよ。小学校の頃は病弱でほとんど保健室にいたけど、良くなったから同じ小学校じゃない人でも気軽に話しかけてね♪」


そういえば、小学生の頃想里愛ちゃんの妹を教室で見かけなかったけどそういう理由があったのか。想里愛ちゃんに似て、端正な顔立ちの美少女だ。


檜香 真樹「僕はひごうまさきです。伽羅大学付属小学校から来ました。この辺りのお店は詳しいので気軽に話しかけてください。よろしくお願いします。」


うーん、この内容じゃ想里愛ちゃんに対するメッセージでしかない気がする。言った後になって恥ずかしくなってきた。


優樹 想里愛「あの・・・」


檜香 真樹「ふぁっ あ、どうも・・・」


優樹 想里愛「真樹くんだよね?隣の席でびっくりしたよ!あの頃が懐かしいねっ♪」


檜香 真樹「そうだよ!覚えていてくれてたんだ、うんうん懐かしいねっ♪」


想里愛ちゃんから話しかけてくれて良かった。覚えていてくれて嬉しい。おかげで楽しくお話ができた。5年ぶりの再会に感謝だ。


想里愛「学校が終わったら・・・さっそくお店一緒に回ってくれる・・・?」


真樹「もちろん良いよ!午後も時間大丈夫なの?」


想里愛「大丈夫だよ!じゃあ決まりだね♪」


さっそく親しくなれた気がする。早めの放課後も楽しみで仕方ない。

自己紹介が終わり校庭に移動する。なんとグループ分けで欠席者の都合で僕と想里愛ちゃんだけで校庭で過ごす事になった。用意した弁当をテーブルに置き配られている豚汁を想里愛ちゃんと取りに行く。

この学校は山の上の方に建てられた校舎で校庭に見事な桜並木が植林されている。特にこの校庭の中央には神社から寄贈された桜の大木の樹齢は2000年を超えているそうだ。、間近で見ると強い生命力に溢れている。なんて神聖なんだ。


想里愛「わあ~おっきいね♪」


真樹「そうだね、初めて見たよ~」


豚汁と焼き鳥と蕎麦茶を受け取りテーブルへ戻る。お弁当が無くても賄えるぐらい気前が良い。するとアナウンスが聞こえる。


平田紅葉「先生方の劇が催されます。しばらく続きますので食べ終わった生徒から下校されても構いません。」


想里愛「真樹くん、あたしのおにぎりと交換してみない?♪」


真樹「良いね、しようしよう~」


鶏皮の焼き鳥と合わせて想里愛ちゃんが手作りしたおにぎりを美味しく頂く。具は鮭が入っている。脂が乗っていて美味しい。


想里愛「真樹くんのキムチと焼き肉のおにぎり美味しいね♪」


真樹「僕も朝から握ったんだ、気に入ってもらえて良かった♪」


人数は二人だけだが周りのグループに負けないぐらい楽しく過ごせている。・・・と思う。


想里愛「放課後はどこに連れて行ってくれるの?♪」


真樹「そうだなあ・・・デパートでも良いかな?」


想里愛「良いよ♪」


すぐには気付けなかったがよく見れば小学校の頃の面影があり素敵な笑顔はあの頃と変わらない。

この学校は教育方針の為か珍しく私服で登校する事が許されており全員見事に私服で登校している。

想里愛ちゃんの白のワンピースはとても似合っていて食事を忘れるぐらい綺麗だ。


想里愛「真樹くん、あたしが話かけてるせいで食べ終わってないのかな・・・?」


そう言うとちらちらと周りがこちらを見てない事を確認を終えると・・・


想里愛「はい、あ~ん・・・♪」


なんとおにぎりの残りを僕の口元へ近づける想里愛ちゃん。なんて積極的なんだ。すごく恥ずかしいけれど想里愛ちゃんの好意を無下にする訳にはいかない。僕もちらちらと周りを確認し劇の方に集中している事を確認してからぱくりとおにぎりを口に含む。


真樹「すごく、美味しいよ。」


顔を赤くしながら精一杯そう応える。彼女は嬉しそうに輝いた笑顔を見せてくれて・・・


想里愛「良かった♪じゃあこっちも・・・♪」


お次は焼き鳥もあ~んで食べさせてもらえた。この距離感・・・まったく、異性の幼馴染は最高だぜ!

この流れは・・・僕もやるしかない!


真樹「想里愛ちゃん・・・僕も食べさせても良いかな?」


想里愛「え!?あ・・・良いよぉ♪」


恥ずかしがってるようだけどすぐに快諾してもらえた。言ってみて良かった。言ったからにはしっかり有言実行しないと・・・!


真樹「じゃあ・・・」


想里愛「う、うん・・・」


僕の焼き鳥をゆっくり口に含ませる想里愛ちゃん。なんなんだこのときめきは・・・。彼女の咀嚼する様子をじっくり見て食べ終えるのを確認してまたあ~んしてもらって食べてもらうのを繰り返す・・・これってある意味共同作業なんじゃ・・・。


想里愛「真樹くんの焼き鳥・・・美味しいよ♪」


まったく・・・今日の欠席者に感謝だぜ!劇が終わったようでちらほらと生徒達が下校し始める。僕達もそろそろ移動しようかな?


想里愛「デパートいこっ?♪」


真樹「そうだね!さっそく行こっか♪」


山桜が僕と彼女を歓迎するように美しく舞い散り、昼下がりをデパートのある街の方へ向けて歩いて行く二人の姿は遠くなっていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

想里愛ちゃんと真樹くん めぐろまさき @meguromasaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ