第3話 白球とショートカット

私はふと、何年か振りに髪を伸ばしてみようかな…と思った。

小学四年生以来、ずっと短くし続けてきた私。

野球がやりたくて、男の子みたいに、

かなり短くバッサリと切ってしまった長い髪…。


でも…。


「もういいかなぁ~」

幼馴染の打った爽快な三塁打を見て、私はそう思った。

自分でプレイ出来なくとも…あの感動は、またきっと幼馴染が見せてくれるに違いない。


今までずっと、心の中でわだかまっていた何かが、金属バットの快音と、ライト頭上を軽々と越えて行く白球が描いたアーチと共に、一瞬のうちに吹き飛んでいった…。そんな気がした。


帰り道、ちょっと本屋に寄ってみよう。

ヘアスタイルの雑誌でも立ち読みしてみようか…。


異性を意識して、髪型や服装を気にし始めた男子。

それに負けじと、お洒落に余念がない女子。

私もクラスメイトたちに負けてはいられない。


そう、私たちは中学二年生…。

恋に遊びに、もちろん勉強に…今を思い切り楽しもう。

そう思いながら私は、短く揃えていた髪に手を遣った。



-了-

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ショートカットとホームラン 宇佐美真里 @ottoleaf

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ