インポッシブル、インポッシブル、インポッシブル。【なずみのホラー便 第75弾】

なずみ智子

インポッシブル、インポッシブル、インポッシブル。

 マイちゃんのためなら、俺は何でもできると思っていた。

 純真無垢なマイちゃんは、俺と同じ22才の割には甘えん坊で、すぐ人に頼る性格だったけど、そこも可愛かった。


 そんなある日の深夜2時、泣きじゃくるマイちゃんから助けを求める電話が入った。急いで彼女のマンションに駆けつけた俺が見たのは、”男の死体を包丁で解体中のマイちゃん”だった。


「バラバラにしたいんだけど、うまくいかないのぉ。手伝ってぇ」

「誰だよ、この男?!」

「彼氏だよ。マイと別れたいって言うんだもん。だから刺しちゃったぁ」

「彼氏いたんだ……というか自首しなよ!」

「やだ、マイは犯罪者になんてなりたくないよぉ」

「罪を犯した時点で犯罪者だし! それに俺まで犯罪者にする気かよ?!」

「どうして、そんなこと言うのぉ? マイのためなら何でもできるって言ってたくせにぃ」


 無理、無理、無理。俺は逃げ出した。

 けれども、俺の背中にドン!と鈍くも熱い衝撃が走った。そう、お察しの通り俺はマイちゃんに刺されていた。

 薄れゆく意識の中、さらに泣きじゃくるマイちゃんの声が響いてきた。

「どうしよう? もう一体、増えちゃったぁ。誰かマイを助けてぇ。ヘルプミィー」



――fin――

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