第30話 占いの成果
放課後になっても教室内には多くの生徒がまだ残っている。
もちろんみんなの関心は俺たちの恋の行く末をたしかめたいからに決まっていた。
「あまり時間は取らせないからついてきて」
「わ、わかった……」
佳純の緊張感が伝わってきたからだろう。
思わず噛んでしまいそうになりながらも返事をして後に続く。
教室からは「あっ!」と早乙女さんの声が聞こえていた気がする。
あれ、ここってたしか屋上に向かう階段だよな。
「実はさ、昼休みに先生に頼んで屋上の鍵を借りておいたんだ」
「なんでまた屋上なんかに―――」
俺が質問しようとしたときにはすでに佳純の瞳にいっぱいの涙が浮かんでいた。
「だ、だって泣いてるところなんか誰にも見られたくなかったから……」
屋上に来るなり佳純は泣いていた。
いったいどうして……
「きゅ、急にどうしたのさ?それなら俺にも泣いてるところは見せたくないだろ。それに……」
「快斗は他の人たちとは違うの。だって……特別だもん」
特別と聞いて心がトクンと波を打つ。
なんだこの感情。早乙女さんから告白された時とはまた違ったこの感じは……
「い、いきなりなに言ってるんだよ。いつもの佳純らしくないぞ」
「私らしくないってなに?そんなに私の事をなんでも知ってるの?快斗は全然分かってない。あなたの大切なイラスト集を返さないのだって大好きな占いを二人でするのだって全部……全部……あなたの事が大好きになっちゃったからなのに。だけど早乙女さんに先に告白されてしまって、一生後悔することになっちゃって……」
「えっ!?」
「ん?」
天然である佳純はまだ気付いていない。
大嫌いだったはずの異性の前で泣く自分の情けない姿に気を取られ、さりげなく告白してしまっていることに。
「相変わらずポンコツだな佳純は」
「な、なにこの状況で失礼な!これから大事な話があるんだから!」
「これからってお前……まあいい。なんだか落ち込んでるみたいだけど、俺も同じだよ。あれだけ占いしてもまだ俺はモテ男になれていない。だから……付き合ってくれないか?」
好きだと言いたいのにヘタレである快斗の言葉はもちろん遠回しの告白だった。
しかし……当然これではポンコツ佳純に正しく伝わるはずもなく……
「分かったわよ!付き合ってあげるわよ。だからわたしの大事な話を聞いて―――」
「うおおおおお!まじか?やった!初めて彼女出来た!」
感情が高まり無意識に佳純を抱きしめてしまった。
「きゃ!?」
大好きな相手に抱きしめられた佳純はわけもわからず小さな声を出すと固まってしまった。
「カップルになってもふたりで占いは続けていこうな?」
「……カップル?……彼女?それって……わたし……たちが?」
ようやく佳純の思考が追いついてくる。
「か、快斗!!」
全てを理解した佳純も力いっぱい両手で快斗を抱きしめた。
こうして占いをきっかけに幸せなカップルがまた1組生まれたのだった。
おわり。
隣の美少女がやたらと占いを無理強いしてくるけど、占いなんかで陰キャの俺がモテ男になれる訳ないだろ! スズヤギ @suzuyagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます