第29話 宣戦布告
お昼休みにふたりでいつものように占いをしている時だった。
ちなみに動物占いである。
「ふたりはいったいどんな関係なの?みんなすごく気になってるんだよねー」
早乙女さんが前触れもなく突然に爆弾を落としてきた。
昼休みでガヤガヤしていた教室が一瞬で静まり返る。
気付けば女子だけでなく男子も敏感に反応しているのか、全員の視線が俺から佳純へと移っていった。
・・・どんな関係か?
以前であれば間違いなく『気の合う友人』と即答していただろう。
さらにそれ以前であれば『イラスト集を人質に取る悪魔』
それが今はハッキリ言って即答出来ないでいた。
チラリと佳純の顔を伺うとやはり何か考えこんでるようにも見える。
「それを知ったからといってなにかあるのか?それにこんな大勢の前でする話でもないし、早乙女さんに答えなきゃいけない理由も義務もないだろ」
「・・・理由ならちゃんとあるもん・・・わたし・・・快斗くんの事が好きだから付き合って欲しいの!」
それはあまりにも突然だった。
席を外している者を除けば、ほぼクラス全員の前での告白。
あまりにも衝撃的な告白にクラス中がどよめく。
最近では少しイメージが上がって来たとはいえ、陰キャの男子に人気者の美少女が愛を告白してきたのだ。騒然となって当たり前である。
「・・・やっぱりそうだったんだ?最近なにかと近づいてくるし怪しいとは思っていたのよね。でもなんでこのタイミングで告白したの?わざわざ大勢の前で」
「・・・宣戦布告。ふたりが付き合っていなければの話だけど」
「・・・だって。か、快斗どうなの?わたしたち・・・ってあれ?快斗!あなた大丈夫なの!?」
途中からふたりの会話はまともに聞こえていない。
だって・・・う、生まれて初めて告白されたのだ。
冷静でいられるわけがない。今晩はお赤飯にしてもらおう。声を大にして言わせて欲しい。
「地球に生まれて良かったーーー!!」
ペチ!
「なに大きな声で突然叫んでんのよ!しかも話が壮大過ぎる!」
おでこにデコピンを喰らい我にかえる。
あれ、心の声がダダ漏れてしまった?
「悪ノリし過ぎた。早乙女さん失礼な言い方して悪かった。その話は放課後にでいいかな?」
「・・・うん。いい返事聞かせてね」
スッキリした彼女の顔が印象的だった。これだけ大勢の前で告白した勇気と本気度が伝わってくる。
その気持ちに応えられるか?そんな次元の問題ではなかった。
告白されたのがそもそも初めてだからどうすればいいのか、はっきり言ってわからないのだ。
そしてもう一つ・・・佳純だけにはこの告白を見られたくはなかった。
その理由はなぜだか自分でも分からない。
佳純は見るからに動揺してか元気がなくなってしまった。
こんな表情はやっぱり・・・見たくない。
「わ、わたしさ・・・今すごく後悔してるから・・・あまり見ないで」
消えてしまいそうな声で呟くと急いで教室を出て行ってしまった。
午後の授業が始まる直前になって戻ってきた佳純の表情はかなり固い。
ふと目が合うとその瞳はなにかを決心したように真剣だった。
「放課後、早乙女さんに返事をする前にわたしにも少しだけ時間をください」
特に他人行儀でもないその言い回しは、なにか特別な想いが込められているように感じる。
「ああ、もちろんだ。お前のためならいくらだって時間をくれてやる」
なんでこんな事をいったのかはわからない。
直感的にそう思っただけなのだ。
「・・・ありがとう」
俯いて表情は見えないものの、答えは間違っていなかったようだ。
放課後が近づくにつれて、胸の鼓動が大きくなっていた。
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