第28話 写真
・・・なんでこうなった?
お昼休みに入るとクラス内が慌ただしくなる。
「じゃあ食べ終わった人から順番ねー」
「「はーい!(オッケー!)」」
相性占いを行う人数が急激に増えてしまったので、お昼休みに行うことにしたのだ。
俺の貴重なラノベ鑑賞タイムが・・・
いつものように美雲の作ったキャラ弁を食べ終えてラノベを鞄から取り出そうとした時には、最初の挑戦者が声をかけてきた。
「ふぁい!ふぁ・・んぐっ!」
「バカなにやってんだよ?これを早く飲め!」
飲みかけのルイボスティーが入っているペットボトルを急いで差し出した。
「ぷぅっはー!あーやばかった!サンドイッチ一気にほうばったら
あ、全部飲み干しやがった。
大好きな占いの1番手を譲りたくないからって急ぎすぎだろ。
「さあ始めましょ?あ、ちょっと待ってね」
髪にブラッシングをして簡単に口紅を塗っている。
・・・これからするの占いだよね?
占いアプリをダウンロードして起動する。
えーと・・・相性を占う相手の顔をスマホでお互いに撮影して、「カシャッ!」
「じゃあスタート押せばいいんだな?」
「う、うん!」
どうしたんだ?スタートをする前から顔がニヤニヤしてる。
陰キャの俺が言うのもおこがましいかもしれないけど・・・キモイ。
結果は・・・『93%♡』
「うっし!」
えっ!?いまの図太い声は佳純?
・・・男らしい。ってか気合入りすぎだろ。
「やっぱり私たち相性ばつぐ---」
「はい、後が使えてるから終わったらさっさとどいてどいてー!」
早乙女さんに排除された佳純はぶつぶつ言いながらもスマホの画面を見てさほど怒らなかった。
いつもなら間違いなく文句を言っているのに、いったい・・・
あらためて順番待ちをしている列を見ると不思議に思う。
女子ってほんとに占いが好きなんだな。
しかも佳純と同じように軽く身なりを整えたり化粧を直している。
占いって正装するほど神聖なものだったのだ。少し緊張してきた・・・
「カシャッ!」
次々と占っていく。
最初に高い結果が出たから案外出やすいのかもと思っていたものの、2番手は早乙女さんの88%でその他は70%台が多かった。
これだけ差が出ると不満も出るんじゃないかと思っていたのに、みんな満足している。
やっぱり占いがしたかっただけで俺との相性結果はどうでもいいらしい。
なんだか無駄にダメージを負ってしまった・・・
ふと疑問に思う・・・このアプリどれくらいの精度なんだろうか?
前の席に座る『太っちょの山田くん』と診断してみよう。
「ヤダよ僕。それに男子の写真なんて欲しくないし、クラスの女子ほぼ全員の写真を手に入れた君が羨ましいよ」
あっさり断られてしまった。
写真がどうのと言っていたけど、なんの事かさっぱり分からない・・・
「あれ?快斗くんて誰かに似てない?」
「そういえば、最近ユーチューブで見た気がするんだけどなんだっけ?」
あちらこちらでそんな声があがっている。
・・・まずい。
俺が出てるのなんて、美雲と一緒に演奏しながら歌ってるカイしかありえない。
なんで佳純以外も見てるんだよ。
美雲はミクの声を担当してるからどちらかといえば、インドア派の男子に人気があるのだ。
「た、他人のそら似ってやつじゃないかなー?」
はっきり言って・・・言わなくても今の俺は怪しい。
陰キャだからもともと挙動不審なのに、一斉に視線が注がれると体が固まって逃げることさえできない。
「お、俺はやってない・・・」
「ソ、ソウダヨ。カイトガウタエルワケナイジャナイ」
「え?快斗くん歌ってるの?」
「ミクチャントキョウダイデウタッテルノナンテシラナイヨ」
「えええええ!!!ミクちゃんてあのアイドルの!?じゃあ快斗くんて・・・カイ・・なの?」
「な、なんで?この中にスパイがいるわ!」
・・・・ここまでプレッシャーに弱い奴だったとは。
でも嘘がつけないのは悪いことではないよ佳純。気付けばほとんど無意識に頭を撫でていた。
「ふにゃ!?み。みんなの前でしつけ・・」
過去最高に顔を真っ赤にして俯き、へなへなと地面に座り込んでしまった。
あ、美雲を褒める時と同じようにやってしまった。今回は暴露されたのだから本来は咎める場面なんだけど、素直な子は信用に値する。
「「きゃあああああああ!!」」
一連のやりとりが終わるとクラスの女の子が騒ぎ出した。
どうも先日の生配信やゲーム制作会社が密かに撮ったデート映像がSNSで話題になっていたそうで我がクラスも例外ではなかったのだ。
・・・わあああああああああ!!
デートの映像・・・だと!?
デカパイ後輩やモフモフ委員の事が頭に浮かんでくる。
あんな場面やこんな場面が全部撮られていたなんて・・・やっぱり業界って恐ろしい・・・
カイであることはクラスのみんなだけが知っている秘密との共通認識で意見が固まった。
特に女の子って生き物は「自分だけが秘密を知っていると優越感にひたれるから」と佳純が少し寂しそうに言っていた。
なんだか元気ないからまた頭を優しく撫でたら少し元気になってくれたけど。
ちなみに例の相性診断アプリは、合法的に好きな相手の写真を手に入れる目的も含まれていた事は俺だけが知らなかった。
写真フォルダに女の子の写真がたくさん入っている事に気付いたのはだいぶ先の事である。
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