第27話 クラスの変化

 「き、昨日はどうだったのよ?」


 「……ああ……モフモフさせられた」


 俺は窓ガラス越しに見える空をぼんやりと眺めながら答えた。空は青いんだな……


 「な!?ちょっとモフモフって……なんで大事な物を失った雰囲気醸し出してるのよ!」


 思い出したくないからそっとしておいて欲しい……


 昨日はあれから30分はモフモフさせられた。

 かわいい猫までもが引いてしまうほどに。


 「人生って切ないよな……」


 すると佳純が意を決したような表情で、


 「わ、わたしだって快斗になら……胸を貸してもいいわよ……」


 「へっ!?お、お前それはパフパフだから!」


 「あっ!え?あはあはあは」


 ダメだコイツ、壊れた首振り人形みたいになってる。


 「それで・・・実際うまくいったの?今日と明日もデートなんでしょ?」


 コイツなりに心配してくれてるのか。やっぱいい奴だな。


 「それなんだけど・・・先に出かけたふたりからの報告が絶賛だったらしくてな。もともと残りのふたりは興味なさそうだったし、条件はクリアしたって事でこれ以上必要ないって連絡があったんだよ」


 「ほんとに?良かったー!良かったよー・・・でもさSNSでも配信されてるんだっけ?」


 そんな泣きそうになる程喜んでくれるとはな。SNSだと・・・そうだった!怖いからその話には触れないでおいたんだ。叩かれでもしてたらと考えるだけでぞっとしてしまうしアフレコに入る時にでも確認しよう。


 「ネットは誹謗中傷が怖いから見ない方がいいだろ。佳純も気にするなよ」


 「気になる・・・気になる・・・」


 電気メーカーのCMのような言い回しはやめて欲しい。

 名前も知らない木ですから~


 「俺も気になるのは、ミクのイラスト集が無事なのかが知りたいんだけど?」


 「それなら安心してよ!でも・・・早く占いでモテモテにならないと責任は持てないけどね」


 何度言ったらわかるんだ?占いでモテるようになるわけがないだろ。

 でも背に腹は代えられない。


 「よし!これから毎日お題をクリアしていくからな」


 「毎日・・・うん!毎日頑張ろうね!」


 なんだかやけに嬉しそうな佳純をジト目でみるが、真相は分からなかった。


 「今日の占いは何にする?」


 「たまにはスマホで相性占いとかどうかしら?パーセントも出るらしいわよ?」


 ん?今の声は佳純じゃないよな?

 いつの間にか俺の背後には、不敵な笑みを浮かべる早乙女さんが立っていた。


 「ちょっと?勝手に話に割り込まないでくれる?」


 「わたしは快斗くんに話しかけただけなんですけどー?」


 相変わらず仲がいいな。

 それに・・・快斗くん?前回の5本指占いで鈴木から昇格したようだ。


 「あなたの結果は前回が愛人だったからやめておきなさいよ?」


 「ああ、佳純が村人だった占いか」


 「恋人だっつーの!だからどこのRPGの村長よ!」


 村人どころかとうとう村長になってしまったか・・・栄転おめでとう佳純。

 そんな馬鹿な会話をしていると、


 「わたしは愛人でも構わないわよ?」


 「「えっ!?」」


 いきなりの爆弾発言にさすがに俺も佳純も絶句した。

 早乙女さんは自分のグループを解散させてから何が狙いなのかがさっぱりつかめない。


 「ダメに決まってるでしょ!!もういいわ!相性占いはじめましょ!」


 キレ始める佳純をよそに、なぜか突然クラスの女子達がわらわらと集まりだした。

 え?なにこれ?フラッシュモブでも始まるの?


 「あの・・・私たちも仲間に入れてもらいたいんだけど・・・」


 クラスの女子達が一斉にどうしてしまったのか?集団催眠じゃあるまいし・・

 しかし理由は案外簡単なことだった。

 体力測定ではパルクールでの派手なパフォーマンスをし、学力テストで好成績をおさめていれば多少は眼鏡をかけた陰キャでも優良物件として認識され始める。ましてやクラスの誇るふたりの美少女が気にかけているとなれば物件価値はさらに上がって当然だった。まだ多くはその素顔を知らないので大きな混乱にはなっていないのが救いである。


 「お、おい佳純!これって・・・占いでモテ---」


 「そんなわけないでしょ!みんなは占いがし・た・い・だ・け!」


 そ、そんな般若のような顔をして反論することないだろ。

 ストレートにあんたはモテないって言われた気がして、かなりへこんでしまった。

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