喰らう事しか知らないミミックがいくら喰らっても死なない吸血鬼の少女と出会い、喰らう事以外を知った話。
絵本のような童話の様な優しい感じのする物語ですが、少女の生い立ちが結構壮絶な感じでダークファンタジーという感じがします。優しいだけではなく厳しさも詰め込まれた作品。
ミミック側の認識がズレにズレまくっているのがいいですね。吸血鬼の少女のどうしてそうなるのか全く分からないけれど、特に害はない(食べられるけど)からと放置しているドライさもいいです。手がぼろぼろになるまで殴ったりもしましたけど。
最後にハッピーエンドで終わるのがとても良かったです。めちゃくちゃな目に合って来たんでしょうけど、最後が幸せならそれでいいんです。これこそロマン。ロマンはいいぞ。
洞窟の中にただずっといるだけのミミックと、そこに現れた不死の少女のおはなし。
絵本です。いや絵はどこにもないのですけど。いざ読んでみるとまったく完璧な絵本そのもので、でも単純に絵本から絵をなくして文章だけ抜き出したというものではなく(たぶんそれだとまず絵本とは感じない)、本来絵の担っている部分まで全部文章がやってくれているという、読解可能理解不能の代物が目の前にありました。えっどうやって成り立ってるのこれ……? オーパーツ……?
なんだろうこれ。この、どう……何?(混乱している)
正直、ただ広大な宇宙に思いを馳せるばかりで何も書けることがないのですけど、とりあえず文章がとんでもないことになってます。まるで歌っているかのような本文のリズム、加えてその文体というか語り口の、ところどころに差し挟まれる変拍子のようなゆらぎ。わかりやすいところだとです・ます調とだ・である調の使い分け等、かなり大胆な動きで読み手の脳を揺さぶってきて、つまり音節的な美しさを生み出す以上に、さらにもう一歩踏み込んだところで(脳で音から文に処理している段階で)リズムを作ってくる、なんかもう呪術みたいなとろみと甘みのある文章でした。たぶんいっぱい摂取すると危ないやつ。
物語も最高でした。最高なんですけど実質もう文章に丸ごと取り込まれて半分くらい同化してるように見えるので、殊更お話の筋だけを切り出してどうこうという感覚にはなれず再び宇宙に思いを馳せています。まさに絵本といった趣のストーリー、お伽話の世界のようでいて、でもその実単純な子供向けとは明らかに違う、濃密な何かを投げつけてくる作品でした。
面白かったです。いろいろすごいことになってるのでぜひ読んでみてください。