よく見たら濁点が一個多かった

 ダンジョンに出没するという未確認の新種モンスターと、それを捕獲せんと奮闘する三人の冒険者の物語。
 異世界ファンタジーではありますが、お話の構造としてはちょっとミステリ(日常の謎)っぽい側面もあるかもしれません。
 曖昧な噂くらいしか情報のない詳細不明のモンスター、通称「ベッドミミック」。ベッドに擬態した姿でダンジョンに潜み、冒険者を眠りに誘うというその怪物は、しかしどういう生態なのか、一体なぜそんなことをするのか、そもそも本当にいるのか等々、何ひとつはっきりしたことがわかりません。
 その曖昧なモンスターを、でもたまたま知り合った三人の冒険者が、生け捕りにしようとダンジョンに臨む。大まかなお話の筋は大体そのような感じで、特に導入を終えたあとの二話目なんかは、探索あり戦闘あり逃走ありと、しっかり冒険らしい冒険を繰り広げてくれます。戦士、探索士、魔法使いと、三人の役割がはっきり分かれていて、それぞれに見合った見せ場があるのも素敵なところ。
 個人的には、物語の終わり方というか、最終章の形式が好きです。まさに『報告』という章題の通りの内容。そこまでの二話との落差も相まってか、想像の余地を掻き立てられるような、綺麗な閉め方の作品でした。