メタル史に残る名文句 FLATBACKER「HARD BLOW」
言葉は、文脈によって意味が変わる。
同じ言葉でも、使われる状況や前後の言葉によって違う意味や印象になる。下手すると真逆の意味になることもある。
それは歌詞でも同じことだ。
今回紹介する曲は、簡単な言葉でも、使い方次第では最大のインパクトを与える歌詞になると教えてくれる。
日本のヘヴィメタルバンド、
フラットバッカーは、80年代にしては珍しくパンクやハードコアを取り入れた音楽性、ひねりの効いたギターのフレーズ、毒のある歌詞が特徴のバンドだ。
80年代日本のメタルバンドの中では、特に個性的なバンドの1つと言ってもいいだろう。
この曲は、ハードコアの要素が強い高速のヘヴィメタルで、バンドの代表曲だ。
曲自体の完成度も高いが、歌詞はさらに強烈で、一度聞いたら忘れられない。
「いい加減にしなさいよ 今に痛い目にあうわよ」
とシャウトするのだ。
それだけ聞くとイロモノのように思えるかもしれない。
ところがこの言葉、バンド全体の激しい演奏、パワフルでドスの効いた歌声、そして歌詞の他の部分のおかげで、ユーモアと説得力を兼ね備えた名言として輝いている。
英語を交えつつ激しく毒づくような歌詞に、女言葉のお説教みたいな表現を入れることで、ただ過激なだけで終わらず、イロモノにもならない絶妙なバランスでインパクトを与えている。
そのインパクトは、私に
「そうだ、オレの表現したいのはこんな言葉だ!」
と思わせるには十分すぎるほどだった。
初めてこの曲を聴いたのは、ヘヴィメタルにハマってから数年経って、日本のバンドをいろいろ探していた頃だ。
当時は、筋肉少女帯と人間椅子に始まり、
そんなある日、ヘヴィメタル雑誌「ヘドバン」で「FLATBACKER」の名前を見つける。
「フラット…バッカー?」
フラットバッカーは、LOUDNESSにいたボーカリストの山田雅樹の出身バンドとして、名前だけは知っていた。でも肝心の音はまだ知らない。
ストリーミングで見つけて聴いてみた。
「何だこりゃ!?」
脳天に巨大な斧を振り下ろされたような衝撃を受けた。
鋭く切り込むサウンド。シニカルでパンク、それでいてちょっと文学的な歌詞。
それが、文章を書く自分に、新しいビジョンを見せてくれた。
それまで書きたかったのは、「軽く読めて笑える文章」と、「SF風の不思議な世界観」だった。
そこに新しく「攻撃性の中に深みを感じる表現」が増えたのだ。
その後、毒のある表現をいろいろ考えているものの、なかなか作品としてまとまらない。
もう少しいろいろ取り入れて、深く読み込む必要がありそうだ。
まあ何にせよ、「いい加減にしなさいよ 今に痛い目にあうわよ」の叫びが、自分の世界を広げてくれたわけだ。
斬新なもの、尖ったもの、個性的なもの、クセの強いもの。
そんなものを求めている人は、ぜひ聴いてみてほしい。
特に、激しいロックが好きな人にはいいと思う。
新しい世界が見えてくるかもしれない。
(コラム)私の名曲~思い出を添えて~ 二輪ほむら @wno-41592
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