旦那様は、おらが守る!【なずみのホラー便 第74弾】

なずみ智子

旦那様は、おらが守る!

 村娘アイダは、人里離れたお屋敷の女中となった。推定30代で美男美女の旦那様と奥様は、お優しい方々だが一つだけ妙な点があった。


 時折、奥様は酷く汗をかいて具合悪そうにハァハァしているべ。でも、お医者様を呼ぶわけでもねえし、旦那様とお部屋に閉じこもっているだけだ。その後、奥様はすぐに元気になるんだけれども、逆に旦那様はベッドの上でグッタリだべ。まさか、奥様は男のエナジーを吸い取る魔物なんじゃねえか? 絶対にそうだ。でも、どうすりゃいいんだべ? ……とりあえず、おらは吸血鬼を退治するみてえに、心臓にぶっとい杭でもガンガン打ち込んどくべか!


 アイダは成功した。だが、旦那様は凄まじい形相で息絶えた奥様の亡骸にすがり泣き叫んだ。「これで奥様にエナジーを吸われることはなくなったべ」と言ったアイダを旦那様は睨みつけた。


「エナジーは不足すると苦しいが、その逆もまた然りだろう。”過ぎたるは猶及ばざるが如し”だ。過剰に溢れ続ける体質の妻より”それ”を定期的に分け与えてもらっていたからこそ、私はとうに90才を超えた今もこの姿を保つことができていた。妻はあらゆる意味で私の命そのものだったのだ!」


――fin――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

旦那様は、おらが守る!【なずみのホラー便 第74弾】 なずみ智子 @nazumi_tomoko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ