第8話 バレてんだよ
「――と、いうわけでドキュメンタリー映画として、先生のプロモーションビデオを作ってみたんですがどうでしょう。今度の学園祭で上映会を開きたいんですよ」
ある日の放課後、教室に残った僕ら――桧山、楠、杉原の四人は、柊先生を交えてハンディカムのモニターを使い、僕が編集した動画を観ていた。
「先生だっていつまでも『トイレに行ってくる』じゃ都合が悪いでしょう? きちんと説明して多くのひとに協力を得るべきです」
杉原はプレゼンをするOLさんのような口調で言った。
すると楠がバツの悪そうにして、
「事情が分かればさ……先生だって無理しなくて済むだろ?」
楠の行動は、いつか先生がクビになるかもというリスクを恐れてのことだった。
「お前もチクったことにビクビクしなくていいもんな!」
「桧山、もう勘弁してくれよ」
僕らは笑った。
しかし先生の表情は硬く、腕組みをして「うーん」と唸っていた。
「先生?」
僕がそう促すと、彼は重い口を開いて。
「まあ、お前らにはバレちゃったから仕方なく教えたけど――これじゃあクラス全員にも説明をしないと……」
”もうとっくにバレてんだよ!”
驚くほど純真で、信じられないほどに強い。
そんな柊先生が僕らはたまらく大好きで。
穏やかな毎日はこれからもずっと続く。
僕らはそれを信じている。
(オレンジマン/完)
オレンジマン 真野てん @heberex
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