第31話 ドラクエⅢによくあるパーティ
(カラム、ごめん!)
俺は姫を助けることにした。
背中にカラムの視線を痛いほど感じる。
蛇竜の尾が姫の足に絡みつく。
姫が前方につんのめる。
「きゃっ!」
倒れた姫に向かって、蛇竜が頭をもたげ「カッ!」と口を開く。
「突!」
蛇竜は、俺の一突きで息絶えた。
「シュキイ姫、大丈夫ですか!?」
「……うん、ありがとう。ユキイチロウ。あなたは、やっぱり頼りになるわ」
姫が安心した様に、俺の胸に顔をうずめた。
「ひ……姫……」
俺はドキドキが止まらない。
「あの~」
後ろから声がする。
(邪魔すんな!)
俺はそう思って振り返った。
「……そんなことしてる暇があったら助けに来てほしかったんですけど……」
そこには蛇竜の首を持った、手負いのカラムがいた。
「ご……ごめん」
俺は、蛇竜と戦ってボロボロになっているカラムを見て、謝った。
「エナジー!」
すかさず、姫が回復魔法をカラムにかける。
カラムの傷がみるみる回復した。
「もう大丈夫でしょ」
「大丈夫じゃないよ」
カラムは姫を無視し、ユキイチロウを責めるような目で見た。
「君の方が、武力はあるし魔法も使えるから、一人で戦えると思ったんだ。だから……シュキイ姫の方を助けた」
「そう……」
カラムは落胆したかのように俯き、声も幾分小さくなっていた。
「ちゃんと、私が回復させてあげたじゃない。なにか不満でもあるの?」
横から姫が割って入って来た。
「だって、ユキイチロウが……」
カラムは泣きそうな声で言った。
俺は何とかフォローしようと、カラムの肩に両手を乗せこう言った。
「仲良くやろうぜ!
俺達は、バランスがいいパーティだよ。
だって、カラムは攻撃系魔法が使えるし、シュキイ姫は回復系魔法が使える。
俺は攻撃力も高いし、大抵の武器を使える。
それに壁役として二人を守れるほどの防御力もある!
だから、仲良くやろうよ!」
勇者、僧侶、魔法使いが揃った感じだった。
これにあと、戦士がいれば、バランスのいいパーティが出来上がる。
「がんばろ! みんな!」
姫が天に向かって拳を上げる。
だが、カラムは黙ったままだった。
剣の山の頂上にいるジェシカを目指して、旅を続ける3人。
喧嘩しつつも、モンスターとの戦いでは連係プレーで、勝ちを重ねていく。
剣の山の周りと、その中腹には、ジェシカに従うモンスターたちが沢山いた。
それらが、俺達を敵とみなし、次々と襲い掛かってくる。
自称「バランスがいいパーティ」は、それらをバシバシ倒していく。
確かに3人は、仲は悪いが上手く連携出来ていた。
先頭の俺が、まず敵陣に飛び込み敵をかく乱する。
そのすきに驚いて逃げまどうモンスターを攻撃魔法でカラムが撃退する。
後方で、姫がユキイチロウとカラムの防御力を高める魔法を使う。
俺は壁役としても後方の二人を守る。
戦闘終了後は、姫が俺とカラムの体力を回復させる魔法を使い、次の戦いに備える。
この循環が、うまく働いていた。
つづく
姫が魔王を好きすぎて困ってます! うんこ @yonechanish
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。姫が魔王を好きすぎて困ってます!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます