第8話
いよいよ文化祭の時期である。体育祭と並び、飯高が最も盛り上がりを見せるビッグイベントだ。我がクラスでも催し物を決める日が来た。
某日。クラスにて拓志が話しかけてくる。
「今年もこの時期が来たかあ」
「あいつは今年も来るって言ってたな」
「また来るん。あの女...颯大の彼女やしな」
「いや、ただの幼馴染なんだが」
「あんなにベッタリしてるのに付き合ってない方がおかしくね」
「いやいや、そっちも十分ベタベタしてるだろ」
「こら、いつまでしょうもないお喋りしとるんだ。さっさと座らんか」
「へいへい。吉俣ってホントうるさいよな」
「こら山本、先生を呼び捨てにするんじゃない」
言い遅れたが、吉俣先生は僕らの学級担任でもある。拓志は1年時から吉俣先生だったので、あまり快くは思っていない。
「さて、僕らのクラスの催し物は何にしましょうか」
「吉俣の悪口暴露大会」
クラス中が爆笑の渦に包まれる。吉俣は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「山本、いい加減にしろ。生徒指導室に送り込むぞ」
「じゃあ、セクハラ先生って訴えますよ」
「いつまでもふざけたことを言うんじゃない」
この拓志と吉俣先生のくだらないやり取りはクラスでは日常茶飯事だ。
このグダグダ劇場を学級委員が仕切り直す。
「はい、仕切り直してやりたいことある人」
「他のクラスがしないこと」
「それはいったい?」
「委員やろ、調べて来いよ」
全く持っていい加減な発想ある。
「じゃあ...調べてくるわ」
おいおい委員長、そのバカ発想に乗るんかい。ここであの鬼先公が発した。
「何もしない。それでいいじゃないか」
ええ~、というため息交じりの声がクラス中に響く。そりゃそうだろう。年に一度の一大イベントなんだから。
「じゃあ真面目に決めんか。バカもん」
「じゃあ、シンプルに劇しようぜ」
「内容何にするん」
「怒る吉俣」
再び拓志が吉俣をネタにし、クラス中が爆笑の渦に包まれる。
「山本、いい加減にしろ」
吉俣先生は怒りを通り越して呆れているようだった。そりゃそうだろうな。
最終的に、学祭では「吉俣学級の日常」というコント劇をすることとなった。
「なに、その面白くなさそうな題名は」
翌日、僕は帰宅中にばったり遭遇した美南と話していた。
「拓志が勝手に決めたんだよ」
「へえ、面白いの」
「拓志はクラス一の芸達者だからな。多少は面白いかもしれない」
「多少って...まさか、台本無いとか言わないでしょうね」
「あるにはあるけど、大まかなあらすじしか書いてないから基本アドリブだよ」
「大丈夫なん、それ」
「まあ、普段のクラスの状況を再現するだけだから、他のクラスと違って念入りな練習が必要ってわけでもないから、その分負担はないのかも」
「まあ、よく分かんないから楽しみにはしておくね」
「おう」
本番はもうすぐだ。
嘉穂鉄道~あの路線が廃止されていなかったら~ エルムのツッコミ担当 @sonic-yukuhashi
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