第7話

 9月、季節はすっかり秋である...

「兄貴、秋だよ。食欲の秋。スポーツの秋。読書の秋」

「さっきから何言ってんだよ」

「いやあ、秋と言えば、ってことですよ」

「そもそも、読書の秋言うてたけど、お前が読書しているところ見たことないけど」

「学校じゃちゃんと読書しているし」

「そりゃあ、読書タイムがあるもんなあ」

「ちゃんと休み時間も読んでるって」

「はいはい、とにかく邪魔だけはしないでくれ。あの先公大量に宿題出すから全然終わらんのよ」

「あ、まだ宿題終わってないん。おっそーい」

「だーかーらー、小学生の宿題と一緒にするなって」

「いやいや、僕も今日は結構たくさん宿題出たよ」

「例えば」

「計算ドリル今までやった範囲全て」

「普段からやってたらすぐ終わるくね」

「それから漢字ノート5ページ」

「普通にすぐ終わるくね」

「それから、都道府県及び県庁所在地暗記」

「5分あれば終わるだろ」

「秀才と凡人を一緒にしないでくれよ」

「ちょい待て、自分で凡人言うなや」

「凡人が一番真っ当だぜ」

「いや、そんなことはない」

「あ、今何時」

「夜9時やけど」

「さっさと風呂入って寝よ」

「おい、宿題終わってんのか」

「いや、全然終わってないよ~」

「さっさと終わらせてから寝ろよ」

いやだー。と言いながら雄大は部屋から出ていった。


 翌朝6時半、上山田駅。俺は拓志と昨日の宿題について話していた。

「結局終わらんかったから早起きしたぜ」

「全く、あの先公1日で出来る量考えろってな」

「バカみたいな量出すくせに全部過去問集からやん?意味不明っちゃ」

「ホント、あのオッサン早く異動しないかな」

「来年異動してくれたらうれしいけどな」

「異動じゃなくてもいい。俺らのクラス受け持たんでくれ」

「それは確かに思う」

「誰が異動してほしいって?」

「うわっ、先公じゃん」

「誰が先公だ。吉俣先生と言いなさい」

「じゃあ、吉俣の先公じゃん」

「山本、いい加減にしろっ」

「ところで先生、なぜこんなところにいるんですか」

「いや、俺ん家もこっちだし」

「え、吉俣って山田の人なん」

「こらっ、山本。先生を呼び捨てにするんじゃない」

「はいはい、吉俣先生は山田の人だったんですねえ」

「飯塚の前は山田にいたからな」

「じゃあ、その前は」

「その前は柳川の方に居たんよ」

「じゃあ、次は豊前かな」

「こら、勝手に異動させるんじゃない」

「いやいや、あの量流石に1日じゃ終わらないですよ」

「終わるように工夫ってもんをせんか」

「いやいや、睡眠時間返上しない限りどう工夫しても終わらないですよ」

「過去問5年分のどこが終わらないって」

「5年分ってことは、試験時間通りやると5時間分。それが有名私立3校分あるから試験時間通りやったら15時間はかかりますよ」

「おいこら、あんなもん30分もあれば終わるだろ」

「それはアンタだけだろ」

「こらっ、山本。先生に向かってアンタとは何事か」

「へいへい、吉俣先生」


 吉俣先生とのくだらない言い争いをしているうちに、6時36分発大隈経由新飯塚行きが到着していた。

「先生、あれに乗るんですか」

「そうよ。いっつもあれに乗っとるっちゃ」

「さっさと乗らないと席取れないですよ」

「そうだな。お前たちもさっさと乗って学校で終わってない分終わらせるんだな」

そう言い捨てて吉俣先生は車内へと消えていった。

「俺たちもさっさと乗っていくか」

「そうだな。あの吉俣と一緒の列車っていうのは気に食わないが」


上山田6時36分発新飯塚行きは今日も元気よく上山田駅を発車した。

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