第6話

 猛暑日の14時過ぎ。夏課外と部活を終え、親友の拓志と共にイオン穂波のロッテリアに来ていた。やはり、室内はクーラーが効いてて涼しい。

「サンキュー、颯大。昼飯ありがとな」

「ったく、ホントに昼飯代を忘れるとか有りえんやろ」

「いやあ、朝のあの缶ジュースで丁度金なくなるとか思わなかったわ」

「確かに、あの缶ジュースは助かったけどさ。絶対ハメたやろ」

「いやいや、そんなことはねえよ」

「第一、何でロッテリアよ。マックでいいじゃん」

「いやいや、こっちのほうが美味しいじゃん」

「まあ、それは認めるけどさ」

「お、こんなところで会うとは思わなんだ」

「あれ、吉岡先輩。今から楽市でバイトですか」

「そうだよ。今から鬼畜の6時間勤務よ」

「まあまあ、いいじゃないですか」

「ゲーセンって楽に見えて無茶苦茶大変だかんね」

「いやあ、楽そうにしか見えないですけどねえ」

「なんだと」

「いえ、何でもありません」

「まあ、どうでもいいわ。とりあえず、制服姿でこんなとこうろつくなよ」

「へーい」

嫌そうにバイトへ向かう吉岡先輩をよそに、僕らはハンバーガーをほおばった。


 18時。バスで新飯塚駅まで戻ってきた。

「そういやあ、2時間くらいロッテリアいたんだな」

「まったく、店側からすれば迷惑客だよな」

「まあ、いいんじゃね...で、次の列車は何分よ」

「26分に漆生経由の豊前川崎行きがあるみたいだな」

「あれ、滅茶苦茶混まんかったっけ」

「いや、混むのはその後の43分じゃなかったっけな」

「あ、あれは総合のやつらが大量に乗ってくるもんな」

「まあ、今は夏休みだから、そんなに乗って来ないと思うけどな」

「それもそうか」

「そういえば、この前雄大が友達とイオンに行ったとき、43分で帰ってきたな」

「あぁ、お前が迎え行かされたってやつだっけ」

「そうそう。夜道を小学生一人で歩かせるつもりなのとか言われてもさ、夏だから説得力無さ過ぎて草生えるわ」

「ホントそれな」


 しばらくして、駅の案内放送が流れた。

「3番のりばに列車が到着します。この列車は折り返し、18時26分発普通列車嘉穂鉄道線経由豊前川崎行きとなります」

「あ、来たな」

「さっさと乗って帰ろうぜ。今日も宿題結構出たし」

「そうだな。あのオッサン、また有名大の過去問出しやがって。たまには自分で問題作れよなあ」

「まあ、過去問から出した方が手間は省けるけどな」

「いやいや、ただの手抜きでしょ」

「手抜きって、やった人が思うことであって、やられた方が思うことじゃないらしいよ。この前ネットで誰かが言ってたよ」

「ああ、あの冷食は手抜きか否か、ってやつか」

「そうそう、ネット音痴のくせによく知ってるな」

「それ、こっちのセリフなんだけど」

「あ、そろそろ発車時間じゃねえか。乗り遅れたら総合のやつらと一緒の列車になってしまうぞ」

「いや、夏休みだから総合のやつらは少ないと思うけど」

とりあえず、俺たちは慌てて発車直前の豊前川崎行きに乗り込んだ。


 帰宅ラッシュ時間帯ということもあり、ほぼ全ての座席が埋まっている。列車は、筑豊の中心都市飯塚から炭鉱の町山田を目指して走り出した。

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