第7話 攫われた少女?

鈴木誠は回復の特技をどうしても試し打ち……けふんけふん……慈善活動として怪我人に使うため僕はシャルルの街を徘徊していた。




怪我人と言えば──




教会かもしれないが……教会の患者を横取りするのは良くないだろう。




となると……また貧困街か?




いやいや……あそこはイシュタルが居るし面倒だ止めておこう。




ではどこに行くか……ギルド?いやいや……人が多すぎる。




んー……どこがいいだろう……




色々考えながら歩いていると路地裏に入ってしまった。




「や、やめてください……」




誰かトラブルに巻き込まれているのか?どこかから声が聞こえる。




僕は声のする方へ走った。




「良いじゃねぇか。こっち来いよ!」




「いや!誰か!誰か!」




「へっへっへ。ここは俺たちのシマだ。誰も助けちゃくれねぇよ。」




下衆い笑いを浮かべ15歳ほどの少女を引きずりながら建物の中に連れ込もうとする瞬間に出くわした。




僕は咄嗟に「おい!やめろ!」などと正義感をかざしてしまった。




「あぁん?てめぇ誰に口聞いてやがんだ?あぁん?」




黒髪に白髪が混じった男は手にしていた少女をどこから出したのか縄で縛り僕の方へ凄みながら歩いてくる。




あと3mといった距離なった途端、男は深く沈み込み左足に力を込めると一足飛びに僕の近くへ来た。




「危ない!逃げて!」




少女は僕の事を心配してくれている様だった。




バチッ!




「ぐぁぁあ!い、痛てぇ痛てぇよぉぉ」




男は僕に触れる直前、魔法陣に弾かれて壁に飛んでいき激突した。




僕はその男の後を追い壁に向かって歩く。




「く、来るな!こ、来ないでくれぇ!来るなぁァァァァ!」




必死に叫ぶ男は尻もちを着いた状態で後ろへ後ずさりしているがもう壁に当たって逃げる場所はない。ガタガタ震え僕を見るが急にニタリと笑うと紫色に染まるダガーを僕の顔目掛けて投げてきた。




バチッ!カラン……カラン




ダガーは魔法陣に弾かれるとそのまま地面に落下した。




男は冷や汗をかいている。どうやら今の攻撃が奥の手だった様だ。




「ず、すまなかった。悪気はないんだ。親方に命令されて仕方なくやったんだよ……な?許してくれよ。この女譲るからさぁ?な?な?」




自分の状況を理解していないのか男は戯言を言う。




「じゃあね。」




《異次元穴》




男の真下に異次元に繋がる穴が発生。彼は一言を発さぬまま存在が消滅した。




僕は男が消滅した事を確認すると少女へと向き直す。




「きゃっ!……あ、ありがとうございます……」




少女が怯えながらもお礼を言ってきた。




「いやいや。僕は別にお礼を言われるような事はしてないよ。あ!足を怪我してる!見せてみて?治せるかもしれないから。」




ぐふふふふ




「あ、いや……でも……お、お願いします……」




かなり少女は怯えた様子だが何故だろう。助けてあげたのにな?おかしいな?




「じゃあいくね?《回復》」




フゥンフゥンフゥンフゥンシャラーン




淡白い光が優しく足の怪我の周りを包みこむ。




「えっ!?はぁ?な、治った?なんで?えっ!?なんで?」




ふっふっふっ。これが《回復》か!こりゃいい。僕を崇め奉るのだ!




「あ!あなたがやってくれたんですよね?ありがとうございます!」




「いえいえ。僕としても実験……けふんけふん。怪我が治って良かったです。でもなんでこんな所を1人で歩いてたの?」




「あ!そうだった!あ、あの……差し出がましいお願いで申し訳ないのですが……助けて頂けないでしょうか?」




「助ける?君を?もう助けたじゃん。」




「あ、はい。そうなんですけど……助けて欲しいんです!私じゃなくて……妹のクルシュを助けてください!先程この建物に連れ込まれたのです。今頃酷いことをされていなければいいけど……」




それは大変だ。あんなことやこんなこと……むふふな展開が待ってるかも知れないな?よし!助けよう!




「分かった!僕に任せてよ!」




「お願いします!」




僕は少女の指し示した裏路地にある薄汚れた石作りの建物に入っていった。




建物は薄暗く誰もいるようには見えない。誰の気配も無い。




すると外から声が聞こえてきた。




「ふふふ。ふはははは!かかったな!さぁ魔導師達よ!今だ!」




建物全体が巨大な魔法陣と化す。青白い光を上げながらミシミシと音がする。




突然浮遊感が発生した。どうやら空を飛んでいるようだ。




「な、なんだ?これは……」




僕は戸惑った。今までにない感覚だ。飛行機とは違う……例えるならヘリコプターの様な飛行方法だ。真上に上昇していく。




そして僕を載せた建物はどこまでも飛行を続けるのだった。

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魔法陣から出られない異世界人 たまごちゃん @tama-gon0310

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