第6話 時空越魔法

その男はイシュタルと言った。




声をかけられるまで全く存在に気づかなかったが黒装束に身を包みいかにも暗殺者という感じだ。何か謎の男みたいでカッコイイ。




「おい。クソ坊主。挨拶してんだから返せや!」




ってかクソ坊主ってなんだよ。挨拶を返さない僕も悪かったよ?でもそんなに言わなくても……前言撤回。コイツ嫌い。




「ご、ごめんなさい。こんにちは。」




「で?なんの用だ?」




「いやぁ……興味があったから入ってみただけなんです。」




「なんでぇ!冷やかしか!けえったけえった!」イシュタルはしっしっと手を振った。




「ごめんなさい。じゃ……」




「おい。やっぱちょっと待て。坊主……」




「じゃあ。」




「おーーーい!くそガキ!待てって言ってんだろ?ちっ!《時間停止》」




周囲の時間が止まる。




「えっ……やっぱイシュタルさんも使えるのか。まぁ本人が言ってたことだし使えるか。」




「ちょっと待てよ!」




スタスタスタスタ………




やはり僕は動けるようだ。イシュタルさんが言っていた事の立証ができた。




時空魔法を使われても同じ時空魔法を使える人には効力が無いと。




しかしここで更なる疑問が浮かんだ─




僕の時空魔法は今より強くすることは出来ないのか?だ。




例えばマッチの火よりバーナーの火。バーナーの火より火炎放射器の火の方がより強力な火力であるとする。




マッチの火とマッチの火で相殺し合うと言うのならマッチの火とバーナーの火では相殺せずにバーナーに軍杯が上がる事になる。




この立証をせねば僕の持ち味でもある《時空魔法》を最大限活用することは難しいだろう。




あーぁ。簡単に時空魔法スキルのレベル上がらねぇかなぁ……?




後ろからイシュタルの『待てよー』って聞こえるけど今は思慮中なんだ。黙れよ。




──時空魔法スキル 1→2にしますか?




おおぅ!急に脳内にまた無機質な言葉が!




スキルポイント足りるのか!?




──只今のスキルポイント 130ポイント




えっ!?かなり増えてるじゃん?どういう事?もしかしてレベル上がってるの?牛の魔物倒したから?




『待てーー!待てよーーー!』まだイシュタルが追いかけてくる。めんどくせぇ。




時空魔法スキル1を一気に5に上げてくれ!




──警告




スキルレベル5を超えると上級魔法に変化します。宜しいですか?




──YES or NO




YESだーーーーー!




──時空魔法スキルが時空越魔法スキルとなりました。




特技 時間停止→抵抗不可時間停止に変化します。


特技 範囲時間操作→空間時間操作に変化します。


特技 空間転移→異空間転移に変化します。


特技 亜空間穴→異次元穴に変化します。




……なに?初めて聞いた特技なんですけど。僕が《時停止》とか《時飛ばし》とか言ってたのは《時間停止》や《範囲時間操作》だったって事か?初めからちゃんと教えてくれって話だ。




念の為ステータス見てみよう!




レベル 14


HP 84


MP 326


力 14


防御 14


速さ 14


器用さ 14


魔力 14


運 6


スキル 言語認識 1、時空越魔法 MAX


スキルポイント……残90ポイント


特技 抵抗不可時間停止、空間時間操作、異空間転移、異次元穴




おおぅ!やっぱレベル上がってるじゃん!


しかもステータスの上昇には傾向があるみたいだな。力~魔力はレベル=ステータスだ。


HPは6の倍数、そしてMPは基礎能力が200?に9の倍数をプラスした物がステータスのようだ。


そして僕が1番気になっているスキルポイント。これは1レベル上がる事に10ポイントくれるみたいだ。そして時空魔法を1から5に上げるために40ポイントを使った事になる。新規にスキルを獲得するには何ポイント必要か分からないがこれはやるしかないだろう。




「ちょっと……待って……」息も絶え絶えのイシュタルだ。まだイシュタルが追いかけてたのか。すっかり忘れてたよ。




《抵抗不可時間停止》




イシュタルは完全に停止している。




ほほぅ。やはり時空魔法が使えてレジスト出来る人すら時間停止させられるのか。すげぇな。時空越魔法!これで僕の時空魔法を超える人には早々出会う事はなくなった筈だ。




「じゃあね。イシュタルさん。中々いい勉強になったよ。バイバーイ!」




暗殺ギルドを去った僕は街の外れへと移動した。比較的人の少ない場所だからだ。




「うーん……他の特技を使ってみたいけど何か危なそうな特技ばっかだなぁ。」




まず……空間時間操作これはある一定の空間の時間を操作出来ると考えられる。


まぁ特技を使うまでもないだろう。




次に……異空間転移。これは危ない。確実に危ないぞ。異空間へ転移出来るんだ。元の世界へと帰る道標になるかも知れないが今はまだやるべきでは無い。




最後に異次元穴。これ……ダメだろ。異次元に飛ばしちゃうんだよね?宇宙空間とかに魔物を放り込むのだろうか?とりあえず実験してみるしかないだろう。




ふぅ……使えない特技が多くて困るぜ……




そしてあとスキルポイントは90ある。




次に獲得するスキル……それは白魔法だろう。




僕には魔法陣による攻撃&防御手段がある。これはある種の無敵状態ではある。しかし今後怪我をする可能性が全く無い訳では無い。


そうなれば怪我を回復する手段を得ることが最優先だ。




──白魔法を取得する!決めたぞ!




──白魔法スキルを解除しますか?




──YES or NO




もっちろんYESだ!




──白魔法 解除しました




矢張り《解除》と言う無機質な言葉。何か引っかかるがよく分からないことを必死で考えても仕方が無い。




ステータスをもう一度見てみよう!




レベル 14


HP 84


MP 326


力 14


防御 14


速さ 14


器用さ 14


魔力 14


運 6


スキル 言語認識 1、時空越魔法 MAX、白魔法 1


スキルポイント……残60ポイント


特技 抵抗不可時間停止、空間時間操作、異空間転移、異次元穴、回復




やった!矢張り白魔法は回復魔法だったか!


そして新たな立証結果。新しくスキルを獲得するにはスキルポイント30ポイントが必要という事が分かった。とりあえず回復という特技もどれくらいの効果があるか不明なため白魔法スキルのレベルはまだ上げないでおくことに。




僕は回復の特技を立証する為、怪我人を探してまたシャルルの街を徘徊する事にした。




そして鈴木誠の運命はここシャルルで大きく変わる事になるのだった──

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