魚の溜息

真花

魚の溜息


胸の裏側で溜息ためいきがくすぶって


当然にある生きたさがなくなるのではない

死にたくない気持ちが消えるのでもない

生と死の境い目が曖昧に

手を伸ばせば触れられる

茶の間のみかんの気楽さで 終わりが横たわっている


胸の裏側の溜息は

見つめれば膨らみ

逸らせば悼みで呼ぶ

何で紛らわしても 紛らうには紛らうのだけど

消えるのを待つために するのがむなしくて


私は魚なのだ

泳ぐことからふと離れたら

沈む 姿勢を保てない

とどまったことが 溜息を生んでいる

泳ぐことと 紛らわすことは 違う


だからと言って

溜息を生まないために 泳ぐのか

違う

正と 負でないことは彼方の差

泳ぐには泳ぐのこころがある


思い出すまでに 捨てた時間

捨てた金 捨てた体力 紛らわすため

それとも泳ぐ準備だった?

モノクロに圧縮された景色を放つ

泳ぎ始める力を


胸の裏側で溜息がくすぶって

溜息のくすぶりを振り切り泳げば いつもの私に戻る筈

上手くいかない もしかして

このまま

このまま終わるのでしょうか



(了)





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魚の溜息 真花 @kawapsyc

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