魚の溜息
真花
魚の溜息
胸の裏側で
当然にある生きたさがなくなるのではない
死にたくない気持ちが消えるのでもない
生と死の境い目が曖昧に
手を伸ばせば触れられる
茶の間のみかんの気楽さで 終わりが横たわっている
胸の裏側の溜息は
見つめれば膨らみ
逸らせば悼みで呼ぶ
何で紛らわしても 紛らうには紛らうのだけど
消えるのを待つために するのがむなしくて
私は魚なのだ
泳ぐことからふと離れたら
沈む 姿勢を保てない
泳ぐことと 紛らわすことは 違う
だからと言って
溜息を生まないために 泳ぐのか
違う
正と 負でないことは彼方の差
泳ぐには泳ぐのこころがある
思い出すまでに 捨てた時間
捨てた金 捨てた体力 紛らわすため
それとも泳ぐ準備だった?
モノクロに圧縮された景色を放つ
泳ぎ始める力を
胸の裏側で溜息がくすぶって
溜息のくすぶりを振り切り泳げば いつもの私に戻る筈
上手くいかない もしかして
このまま
このまま終わるのでしょうか
(了)
魚の溜息 真花 @kawapsyc
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます