第5話 2つ目の代価 祈りの時に幸あらんことを・・

ある日の雪の積もった日に

アリスンは 一人街へと出かけた


「クリスマスの買い物をして来ます。…あ」


何かを言いかけて微笑んで

「一緒に行こうか?」僕はアリスンに言うと


「御仕事の書類は急ぐのでしょう?頑張って」


パタンと扉は締まり

僕は彼女を見送って…


そして…それから

何気なくカレンダーを見る


今日で…あの日から

ちょうど10年以上になるか…


あ…

何かを忘れてる…大事な何かを


カチン…音が鳴る

暖炉の上の砂時計が落ちて

床に…


あ…

そうだ…あの金色の目をした不思議な男は何と言った?


馬車に気をつけよ…


「アリス!!」僕はアリスンを追いかけて街へと…


アリスンは店から大通りへと向かった

「クリスマスのチキンに…それから」微笑みながら呟く


幾つかの袋の中には

毛糸玉に小さな服に


ガッガッと大きな音をたて

何かが近くに近ずく…


何かのはずみで、馬が暴れ、馬車がアリス目掛けて…


「アリスン!」

馬車が今にも彼女を目掛けて来て…

そして…間にあわず

彼女は…



ドン


誰かが彼女の背中を押して

難を逃れた…


「アリス!」


代わりに誰かが…

しかし…そこには誰もおらず…


アリスンを抱き止めたヨハンの後ろに誰かが立っていた…

黒みがかったマントを羽織り

金色の眸をした男がいた


「レディー…落とし物だ…

なんとも可愛らしい赤子の産着だ」


「さて…二つめのパンの代価と…リンゴが一つ」


「リンゴの代価」

「つまり、オマケ…サービズか」

苦笑した金色の眸をした男はそっと笑いかけた


「残りのスープだが…」

「そなたらと…その小さな命に祝福を祈り代価とする…末永く幸在らん事を祈りたもう」


小雪が舞い降り…一陣の風が吹いたかと思うと…


そこには誰もおらず…


何事もなかったように


向こうの街角で小さな子供たちの聖歌隊が

クリスマスの祝いの唄を歌っていた…


メリークリスマス

祈りの時に 幸在らんこと…


FIN

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