おまけ
136.絶壁でも理性は崖っぷち
誰もが手探りで幸せを掴む中、元聖女は真剣に悩んでいた。
「ねえ、私……成長したじゃない?」
「そうですね」
前世界を分離した後、髪色が変わっていたし身長も伸びたので否定しない。相槌を打つ侍女へ、彼女は眉尻を下げて泣きそうな顔で己の平らな胸を撫でた。
「どうして胸だけ成長しなかったのかしら」
「……そう、ですか?」
成長していないのだが、肯定するのは同性として気が引ける。バーベナはぎこちなく返した。手際よくお茶を注いで、お菓子を準備していく。
「お母様も大きいし、セレアも立派だわ。バーベナだって揺れるくらいあるのに」
私の胸は絶壁で揺れもしない。真剣に己の胸を撫で回しながらぼやく姿に、バーベナは吹き出した。ミューレンベルギアによく似たクナウティアは、きっと絶壁のままだろう。遺伝は覆らないと思いながら、現実を突きつけるのは可哀想。慰めの言葉を探すバーベナだが、入室した人物に気づいて、一礼して部屋を出た。
気づかないクナウティアは、まだ己の胸を撫でながら唇を尖らせる。
「もっと大きくなればいいのよ」
「ならば余が育ててやろうか?」
「本当?! って、ええええ? シオン様!」
抱擁と口付けに翻弄されながら、クナウティアの悩みは有耶無耶にされてしまった。結婚式まであと数日――真っ赤な顔で悩ましい表情の婚約者を前に、シオンはかき集めた理性で笑みを浮かべる。顔を出したら、婚約者が己の胸を撫で回す状況だったが……キス以上を我慢した自分を褒めながら、クナウティアの耳に噂を吹き込んだ。
「夫が揉めば大きくなるらしいぞ」
「本当!? やったわ、じゃあ今からお願いします」
今、から? 淫らな誘いに乗ってしまっていいものか。持ち堪えられそうだった理性に盛大にヒビが入っていく。落ちる欠片を元通りに嵌めるが、一度割れた理性は脆い。
しかし一線を超える少し手前で、なんとか持ち直した理性はボロボロでした……気の毒そうに呟いたネリネは、ノックもせず乱入した詫びを棚に上げて主君について淡々と語った。
2年後、我が子を抱くクナウティアの胸はやや大きくなり、彼女は大喜びした。もちろん産後の授乳用だったので、数ヶ月で元通りになったのはいうまでもない。
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一度完結にします。ご要望があれば、また外伝を追加しますね(゜▽゜*)ニパッ♪
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