素直さというものの素晴らしさを思い出させてくれる人間賛歌

とは、言い過ぎかも知れませんが、逆説的な意味で、反面教師的な意味でそう言えるのではないかと思います。

この作品は、丁寧な言葉で書かれているにも関わらず、私には荒々しい苦しみの独白といった感じに思えました。

転ばぬ先の杖として「他者からの褒め言葉をそのまま鵜呑みにするのは早計に過ぎる。他人からの称賛を素直に受け取るといずれバカを見るぞ」という教え。それは、ある種、幼い子が道を踏み外さない為の知恵として、時折授けられるものかと思います。

でも、その教えに従い過ぎて、他者からの褒め言葉を拒絶し続けるとどうなるか。その果てにいる【私】の独白、そして自問自答、或いは救いを求めた先の問答がこの短い作品でありました。

他者からの褒め言葉を素直に受け止めない姿勢が基本になってしまうと、他者を褒める言葉を自身の中に失ってしまう……そんな副次的作用もきっとありますし、もしかしたら、インターネットで匿名の誹謗中傷を繰り返す人たちのメンタリティって、そんなところにあるのかもな、なんて事も考えさせられました。

いい作品です。オススメします。