質問その2『初恋の人って覚えていますか?』
「えっと……?
『タカちゃん! はあーい! 初めてリプします! “給食は便所飯”っていいます。タカちゃんは初恋の人って覚えていますか?』
何だこいつのペンネーム。もっとマシなのなかったのかよ!
まあ、いいか。好きだった子ねぇ……。女の話したら女性視聴者も食いつくから、この質問にするかぁ。」
翌日、動画投稿を終えた高瀬は、次の動画収録へ移る。
「どうも、こんちは!『タカちゃんねる』でっす! さて、今日ですが、実はこの企画、やってるようでやってなかったんだよね〜。
超王道!メントスコーラをやりたいと思いま〜す! ………」
順調に動画の撮影がすすみ、ここで恒例の質問コーナーがはじまる。
「さて! 今日も質問に答えていくよ〜!
質問をくれたのは、ペンネーム、“給食は便所飯”さん! なんつー名前だよww。
『タカちゃん! はあーい! 初めてリプします! “給食は便所飯”っていいます。タカちゃんは初恋の人って覚えていますか?
もしまだ、初恋の人を覚えているようならぜひ教えて下さい!
ちなみに僕は小学生の時に同じクラスにいたアキちゃんという女の子です!
でもアキちゃんはクラスの人気者の男の子が好きなのを知っていたので、告白する前に恋が終わっちゃいました。
ちなみにタカちゃんは女の子に振られて悲しい思いをしたことってありますか?』
うっわ! かなし! 便所飯くん悲しすぎるでしょ!
あ、ちなみにめちゃくちゃ偶然なんだけど、俺の初恋の人の名前も“アキ”っていうんだよね。
いや〜ごめんね?
なんか。俺、小学生の頃からモテモテだったんだよね、これが。
ちなみに振ったことはあるけど、振られたことはありませ〜ん!
あ、こんな事言うと女性視聴者に嫌われちゃうかな? ちなみに今は彼女募集中なので、みんな、質問の応募だけじゃなくって、彼女の応募もどしどししてきねッ☆
それでは、ここまでご視聴いただきありがとうございました! またねッ!」
カメラのスイッチを切り、部屋の中は先程とは対象的に一気に静まる。
高瀬もまた、別人かのように表情を切り替えた。
「………何だこいつ、めっちゃかわいそうなやつじゃん。こういうやつはどうせ安月給で会社でこき使われてるんだろうな〜、ご苦労さまで〜す。」
手元のスマホが鳴り、メッセージを受信したことを知らせた。
「あ、ミホからだ。“撮影終わった?今日おうちに行ってもいい?”……か。」
そのまま、たいして嬉しくもなさそうに、返信内容を打ち込んでゆく。
「“おっけー!今から編集するから、夜に来てくれるよ嬉しいな、待ってるね”……っと。
彼女募集とか言いながら、実はちょーかわいい彼女がすでにいる、ってね。
さぁ、ちゃちゃっと編集しちゃいますか。」
キーボードを叩き、編集を始めて数秒、またしてもスマホに反応が。
今度は着信だった。
「あー、もしもし?叔父さん?どうしたの。あぁ、こないだの会食の話?
大丈夫だって。確かに動画の中で、父さんがよく行く店の名前出しちゃったけど、別に問題ないっしょ。
俺もよく行くし。あそこ高いけどめっちゃうまいし。大丈夫だって。
俺の視聴者が凸ろうとしても、一見さんは無理だし、そもそも一般人には到底手が届かない値段の店だし?
そんな心配しなくても……そんな怒鳴らないでよ。
……じゃ、もう、俺、動画で忙しいから切るね。じゃ。」
スマホを切って、乱雑に机に置く。
「ったく。ちょっと高い店紹介しただけじゃんか、それなのに叔父さんは……これだから、万年俺の父さんの部下止まりなんじゃね?
もう少し仕事ができりゃぁ、子会社の一つでも任せてもらえるのに。」
今度こそ編集するため、高瀬はパソコンに向きなおった。
ここまでご視聴いただき、ありがとうございました。 師崎かおろ @kaoro-mt
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ここまでご視聴いただき、ありがとうございました。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます