舞台は一夜にして吸血鬼に滅ぼされた日本、今は常夜街と呼ばれる。
非常にダークなファンタジーで、その世界観はシビアすぎるぐらいシビアです。
何しろ人間は狩られる側、吸血鬼にとって遊び道具にすぎないからです。
そんな本作はスリリングかつ心理的な描写がしっかりと描かれています。
ファンタジーですが、起死回生の一発大逆転ホームランといった奇跡はありません。人は命を懸けて吸血鬼に抗うのです。
主人公とその中に住むことになった最強の女吸血鬼ルスヴン、二人を中心にユニークな仲間が揃い、吸血鬼と戦っていきます。共に笑い、共に苦しみ、共に泣き、成長していく姿を見るのも本作の醍醐味の一つです。
ご都合主義などはもちろんありません。試練の連続です。
戦いはさらに激化していきます。人は吸血鬼を倒して常夜街に明かりを取り戻せるのか。主人公とルスヴンはどうなっていくのか。まだまだ謎です。
最後まで追い続けるのがもはや運命なのです。
いわゆる「中にいる」タイプのバディものです。主人公の北條一馬さんがその身に宿すのは、絶大な氷結の異能を司る最強の吸血鬼・ルスヴン様。
このお方、彼女自身のためでもあるとはいえ、常に真摯な助言者であり、戦闘における優れた教師として北條さんを支え、彼の選択や決意、覚悟や葛藤を、達観しつつも尊重してくれる大人の女性です。
…たまにふざけたり寝てたりしますけど、そんなお茶目さも魅力ですよね。
そして北條さんもルスヴンさんを頼りつつも、依り掛かるばかりではありません。
未熟な部分は否めませんが、ゆっくりと、しかし確実に成長を続け、意識の面もどんどん変化してゆく、素晴らしい主人公です。
そんな彼だからこそ、ルスヴン様も「人間の戦い」を否定せず、加担するのでしょう。
彼らレジスタンスに脈々と受け継がれてきた、銃や各種装備を使ったクレバーな戦術も必見です。
そして周りを固めるキャラたちにも注目です。漫画大好きで変態だけどやる時はやる加賀さん、彼に「生〇〇〇〇」呼ばわりされる若手有望株の結城さん。そして個人的には商魂逞しい装備屋ガルドさんの強かさが好きです。
広がりを見せる世界観、次々に現れる強敵と、奴らとの激しいバトル、そして束の間の日常シーン…面白いです! ぜひ御一読を!