だが役に立たないこともある

 大学に必要なイベントを終え、各種サークルの勧誘が行われていた。

 「思ったよりサークルが多いのね。そのせいか私たちの探してるサークルが見当たらないわね」

 「そうですね。やはり直接向かったほうが早そうですね」

 「そうしましょう」

 棟が11号棟まであり、目的地は9号棟。この棟は主にサークルの棟として利用されている。かぐや姫たちがむかう場所もそこであった。

 そうこうしているうちに扉の前までたどり着く。どうやら防音性はいいようでどの教室もあまり音が漏れていなかった。扉に立ってかすかに音が聞こえる程度である。そして『本気で挑むゲームサークル』とだけ書かれた質素な張り紙があった。

 幸いなことに現在も活動中なのか少し音が漏れている。

 3回ノックをするが返事がない為勝手に扉を開ける。

 「すみませーん。ここに入りたいんですけど……」

 返事がないので少しだけ扉を開けながら中を確認する。

 すると本や紙を広げてテーブルを囲んでる男3人がなにやら話し合っていた。


 「それするなら『投擲』を振ってください」

 「ん~、初期値だな……そうだ!KP!今からそれとほぼ同じような行動するからそれが成功したら判定も成功にしてくれ!」

 「おもしろい。採用」

 「おい馬鹿やめろ!」

 「いっくぜ!」

 そういい金髪でテンションが高めの男は手元にあった酒瓶に細い紙をいれてそれの先に火をつける。そして即座にごみ袋の山になっている部分にそれを投げた。

 それは放物線を描き綺麗にごみ山に飛び散る。その瞬間、火が燃え広がり火柱が発生した。

 瞬間部屋に熱気が走る。しかし本来鳴るであろう火災報知器が機能する様子は見当たらない。

 「お、成功だな」

 「みたか!これがロールプレイング力よ!」

 「言ってる場合か!はよ消せ馬鹿ども!」

 そういい正常な人間であろう黒髪の少し幼い顔立ちの男は手際よく近くの引き出しから赤いボトルを取り出し、火に向かって投げつける。すると一瞬にして火がほとんど消えた。残り火も次に投げたボトルで完全に消沈した。

 「さすがに何度もやってると手際いいねぇ。俺たちも安心して火が扱えるってもんよ!」

 「就職先は消防士か。かなりいいじゃないか。応援してるぞ」

 黒髪の少し幼い顔立ちの男は青筋を浮かべ二人に近づき

 「あっぶねぇだろうが!何べん言えばわかるんだこんの馬鹿どもがぁ!」

 そう叫び頭を思いっきり殴る。

 かなりいたそうでうめき声をあげながら頭を抱えていた。


 あっけにとられてみていたが正気に戻る。

 この数少ない時間でわかった。ここはやばいと。

 離れようと静かに扉を閉めようとした瞬間後ろから声がかかる。

 「あれ?もしかして入会希望?」

 いつの間にか気の優しそうな大柄な男が立っていた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

かぐや姫は貪欲である こめ おこめ @kosihikari3229

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る