なにごとにも事前情報は大切である

 春。桜が舞い、出会いと別れの季節とはよく言うが、何事にも大なり小なりのイベントがある。

 どれもがいいものではないし、印象に残るようなものばかりでもないが大体の人は未来に希望を抱いて歩いているのだろう。

 「で、私は何のサークルに入ればいいの?」

 ここにも一人、無邪気で、はた迷惑な希望を持ち合わせたものがいる。

 やはりそんな彼女も足取りが軽いのがはたから見てもわかる。

 「ゲームサークルです。主にアナログゲームをしておりまして、たまに電子機器を用いたゲームでの活動も行っているそうです」

 「ふーん。如何にもって感じね」

 そういい彼女はスマホを取り出し何かを検索しだした。

 「アナログゲームねぇ。あんまり触ったことないけど、TRPGに……ボードゲーム……馴染みがないわけでもないし何とかなりそうね」

 「種類が多い為すべて把握は難しいですね。ですが今回は初心者だけど『興味があって』という設定でしたよね?なので問題はないかと」

 「そうね。別にゲームは好きだし設定として練ってくる必要もなさそうだったかしらね」

 かぐや姫は月にいた時の大半は睡眠である。それ以外の時間は情報収集や直接理解するため、それをさわる時間であった。

 その中でもゲーム関係は作品でプレイして理解を得るため自然と時間が長くなる。なのでなじみ深いとは言わないでもわりと日常的なものであった。

 「サークルの人間はどんな感じ?」

 「現段階では男5人、女2人の計7人です」

 「なんだか少なくない?」

 「まだ入ってくるとは思いますがもう一つゲーム系のサークルがございまして、そちらのほうに大体の人が流れていっているようです」

 「ならそっちのほうが遊びがいがあるんじゃない?」

 「しかしそちらは男性のみの募集となっております。どうやら以前姫様と同系統の人間にサークルをつぶされかけているようで、それで男性のみとなっているようですね」

 「なら逆に女目当てで流れてきそうなものだけどね。あいつら現実の女性に興味ないですとか言いながら少しでもチャンスがほしい人種だし」

 「すべてがそうというわけではないですが……どうやら部員の個性とでもいうのでしょうか……少々目立つようなものの集まりのようでして、それで敬遠されているようですね」

 「なるほどね……余計私好みじゃない!いい仕事してるわね!」

 「ありがとうございます」

 かぐや姫は人間で遊ぶのが目的である。もちろん手軽に遊ぶのであれば自主性のないものでも喜んでおもちゃにするが、今回は久々の地球だ。遊ぶのであれば難しく、やりがいのあるほうが燃えるというものであった。非常に厄介である。

 「そういえばあなたはどうするの?一緒のところに入るの?」

 「そのつもりでございます。なにかあればサポートしやすいですし。何より以前のようなことが起こらないとは限りませんから」

 「あぁー、はいはい。わかってるわよ」

 うっとおしそうに返事をする。以前のこともありウサギが警戒心を上げるのは理解しているがそれでも口うるさく感じてしまう。


 「そういえば戸籍とか学生証なんかは用意してるの?」

 「用意できております。学生証はスマホのアプリから確認できます」

 そういわれ指定されたアプリを起動し提示されたパスワードを入力する。

 すると学部等の個人情報の記載や地球での名前が記載されている。

 「史学科の……名前は……『月竹つきたけ ひめ』ね……。なんだか安直じゃない?」

 「分かりやすいものが良いかと。その名前なら自然と姫と呼んでもらえるように誘導しやすいでしょうし」

 「そうかもしれないけどさ……。ま、いいわ。ところであなたはなんていうの?」

 ウサギは自分のスマホを見せる。同じ史学科で名前は

 「『兎田とだ 奉仕たつ』ってあなたねぇ……」

 「ぴったりの名前だと自負しておりますが」

 「あんたがそれでいいならいいわ。んじゃこれからは『兎田』って呼ぶわね。私のことは……『月竹』でいいわ。あと表ではあんまりかしこまった話し方はしないで。変に思われるから」

 「わかりました」

 かぐや姫は若干のため息をつきながら大学に向かうのであった。

 

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