従者はいつの間にか何でもやっている
「姫様、準備が整いました」
「よし!いくわよ!」
ワープゲートを使用し、一人と一匹は地球へ向かう。
ワープゲートの移動先はとある一室になっていた。
12畳ほどの大きさ。ふすまを開けるとキッチンが見える。壁は白くシンプルながらも清潔感がある。ごく一般的なアパートだ。
「思ったより広いわね……このくらいがそれっぽいのかしら?」
「このような都心に近い場所で住むのでしたら少し裕福な学生の一人暮らしといったところでしょうか」
かぐや姫は姫ではあるが住む場所、環境にこだわりはない。もちろん月では大きな家に住んでいたが大体は従者に貸し出しており、自身の部屋も従者に貸し出している部屋と同じくらいの大きさであった。
「なら『わたしぃ~昔からあんまりこういう遊び知らなくて~、教えてくれると嬉しいですぅ』が使いやすくなりそうね」
「あまりそういうことやると煙たがられそうな気がしますが」
「ところで家具とかってどうなってるの?」
「家具はむこうから持ってくることも可能ですしこちらで揃えたいのでしたら資金は用意しあります」
「じゃあ、どうせだしこっちで買いましょうか。少しワクワクするわね!」
十二単のままでは目立つのでこちらにあうように洋服に着替える。
着替えるといっても服の外装データを洋服に変えて見た目の変更を行うだけであるが。なので先ほど着ていた十二単も見た目通りの本物ではない。
「いかがでしょうか?」
「問題ないわ。ただあいつらをつるならこれだとシンプルすぎるからもう少しふわっとした格好のほうがいいかもしれないわね」
「かしこまりました。用意しておきます」
「ところであなたウサギのままで外に出るの?ケージ持ちながら歩きたくないわよ」
「決してそのようなことはさせませんよ」
そういうとウサギの身体が光を包み込み、その光がはじける。
そこから身長の高い、少し目つきの鋭い男性がでてきた。
「それではまいりましょう」
「あなたのその姿久々見たわ」
「なる必要がないですからね。ですが、今後はこっちでの姿が増えるとは思いますが」
こうして二人は外に出た。
かぐや姫にとっては約千年ぶりとなるが決して現代を知らないわけではない。月から様子を見ていたし、地球のものも月に持ってきてもらい触っている。
なのでどれもが初めてではないが実際に地球に降り立って直にふれているとテンションが上がるようで
「見てこのアイロン!アイロン台なくても使えるって!しかもにおいまで取ってくれるって凄くない⁈」
「私たちアイロンなんて使わないじゃないですか」
と、このようにはしゃいでいた。
近くにあった大型家電料品店を見て回り、最新家電をあらかた買っていく。
道中、クレープの屋台があったため立ち寄る。
「私は定番でイチゴにしようかしら。あなたは?」
「わたしは必要ありません。まだ食事の時間ではありませんから」
「ま、あなたたちはそうよね」
今はまるきり人間の姿をしているがこの『ウサギ』という生き物は基本的な欲望を持ち合わせていない。
もちろん食事はとるし、睡眠もとる。しかし、行動原理が『姫に尽くす』という一点であり、ほとんど自主性というものがない。かぐや姫の安全が第一。かぐや姫の言うことは良くも悪くも賛同してしまう。そんな生き物たちだ。だからこそ
「やっぱりあなたたちは私の好みじゃないわ」
かぐや姫はウサギで遊ぶようなことはしなかった。
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