湖畔の月の城
のの(まゆたん@病持ちで返信等おくれます
第1話
今日の晩の満月は夢のように綺麗だった
月が綺麗だ・・ポッンとアーシュはつぶやいた・・
昨日は悪い夢を見た
こんな綺麗な場所にいるのに・・過去の記憶が胸を刺し
あんな夢の形で出てきたのだ・・・
大きな金の天秤に それぞれ一人づつ
一人は立ち上り 黒い長い髪の少女
鎖に片手をかけて握りしめ
もう一人の少女は金の髪 ・・
うつ伏せになり血まみれで 天秤の盆の中は血で満たされていた
片手がだらりと・・
二の腕は 火傷に 他の怪我で血が大地に向かって
腕から流れた血で滴り・・
「兄さま・・これは貴方のせい?
それとも生き残り こうして生きて貴方を脅かす私 のせい? 」
立ち上っている美しい 黒い髪の少女の背中や肩には呪いの刺青
金の髪の少女はよく知ってる 気を失っているのだろうか?
盆の中の自らの血の中にいるのは・・ 誰よりも愛しい・・
「満月が綺麗だ」
ぽっんと 城のバルコニーの長イスに持たれ つぶやいた
「そうだね。」とあいずちをうつ
「お城に招待してくれたアルテシア姫に感謝しなくっちゃね。」と
金色の髪と左右違う瞳の美しいエルトニア姫ことエイル
あいずちをうったエイル・・彼女こそ・・・夢の中の盆の中の血まみれの少女・・・
エイルは 今 この湖畔の月が見える城で
嬉しそうに笑う
城から見える湖畔に満月が映り
見とれてると 遠くの方で ひょこりと湖から湖に住みついてる
水竜達が長い首をもたげ 顔を出してる ・・
「あんなに大きいのに 草食で湖の藻とか食べてるらしいよ」
「 ふぅーん・・ 」とアーシュ
「ねぇ!そろそろ 姫が準備してくれた食事会に行かなきゃ♪
うふふ♪」
「今日はね 服はおニューなんだな ウフフ♪
アクセサリーも一部 新調したの♪」
二の腕の魔法の宝石が埋め込まれた金の腕輪に目をやる
「腕輪も服に合わせて ちょっと替えてみました。」
黙って、そのまま腕を捉えると 何も言わずに二の腕の腕輪を外した
夕べの夢
金の髪の彼女の赤い血と黒々とした傷で 飾られた腕
あの時のままの傷跡・・
えぐられたような幾つかの傷と
焼かれた刻まれた焼き印の文字
それは・・黒髪の少女の名前
「・・・俺のせいだ・・ 」とアーシュは暗くつぶやく
「もっと早くあの時 探しだせたなら・・間に合っていたなら・・」
エイルは 笑顔を見せながら
「傷・・少しづつ・薄くなって来てるの
アーシュが 背丈を追い越す頃には きっと消える」
微笑
お日様のようなキラキラとした笑顔 でも
それはウソ・・ 魔法で焼かれた文字は焼いた本人でも・・
おそらくは消せない・・所有の呪い
暗い表情を見せる アーシュの顔を覗きこみ
「 だから・・そんなに悲しい顔しないで」
優しく微笑
見つめて顔を近ずけて
目をとじて 唇を合わせようとする その瞬間だった
扉の向こうから
短く魔法の呪文 パチンと音がして ドアの鍵が開く!
「 僕らもアルテシア姫にお呼ばれしたワンワン!♪ 」
「お呼ばれ その二♪」
「 ドアの鍵の解除の呪文を唱えたリアンさんだワン」
「 普通 先にノックするのでは・・」渋い顔で さりげなく抗議するアーシュ
影に隠れ 慌てて 腕輪をつけるエイル
「したですワン! ねっ!」
うなずくリアン 目がやぶ睨みがちにリアンを見ながら
「邪魔したかったのか? 」
「当たり!」リアンは にっこり微笑む
「 そうそう アルテシア姫
真紅の薔薇のようなドレスと胸元に赤い宝石つけて 凄く素敵でしたワン!」
「 待ってるワンワン!」
小声でリアンそっとつぶやく
「つまり やる気マンマン という事♪ モテモテだね」
引きつり笑顔で何も言えず、リアンを見ていた
リアンはバルコニーの外の美しい風景に目をやる
そして 無くした片方の自分自身の腕の先を無意識に撫でている
「腕が痛むのか? 」そっと尋ねる
「 たまにね 」明るく笑顔で答える
「無くしたものが たまにせつないな
楽器を扱うのは好きだったからね! それにしても 満月がとても綺麗だ」
それぞれが痛みをかかえてる
それに答えるかのようにつぶやく
「 ああ・・満月が・・とても綺麗だ 」
Fin
湖畔の月の城 のの(まゆたん@病持ちで返信等おくれます @nono1
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