別々の視点から見た、ひとつの気持ち。

同一のプロットから物語を作る企画に参加している作品です。

まず、興味深いと感じたのは、前編は秋人と視点、後編は美冬視点で進む構成でした。
ひとつの出来事を複数人に語らせる構成の芥川龍之介の作品「藪の中」を彷彿させましたが、読み進めていくとどうやら違う。

秋人の美冬に対する気持ち、美冬の秋人に対する気持ち、それぞれは糸のように細いものかも知れませんが、二人の気持ちが結びあい、一つの絆として描かれているように感じました。

これは前述した「藪の中」とは逆のアプローチ、複数の視点で、一つの出来事を紡いで物語に説得力を与える構造のように思えました。
とても勉強になり、物語としても優しく美しい作品です。

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