何かを言いたいのだけれど、それを言葉にはしたくない。

「人を呪わば穴二つ」

ほら、言葉にした途端に陳腐でしょ。

この物語を読んで、面白かったとか面白くなかったとか、怒りを覚えたとか哀しかったとか、
そういう安易な言葉で終わらせることのできる、立派な大人にはなりたくないと思いました。

所謂、誹謗中傷を題材として扱った作品なのですが、
この物語の登場人物は世の中に溢れていて、
ただの作品として読むには身近過ぎます。

言葉には力があり、表現には力がある。
だから誰かの言葉で傷つけられ、命は簡単に奪われます。

だからこそ、
言葉に傷つけられた人は、言葉で癒されて、ねぎらわれて、いたわられて、励まされてほしい。
この物語の中の人たちにはもう無理だから。

そんな祈りを、抱かせてくれた作品でした。