「メタ&メタ」というタグに惹かれて読み始めましたが,この小説にはいわゆるメタ発言は一切出てきません.その代わり,Web小説ユーザの特徴である「読者かつ作者」という立場をうまく利用して物語が構成されている点が斬新です.「公開」「改稿」がキーになっているところもWeb小説らしいです.
と,勝手にWeb小説と言ってしまいましたが,この作品に出てくる作品(?)はWeb小説であることは明示はされておりませんし,ヒロインの名前もどこ由来なのか謎,登場人物名,地名も多くが漢字一文字で表記される東洋風の世界は,どこまでも美しく,引き込まれること間違いなしです.
一方,やっぱり一文字の名前は覚えにくいというのもあったので,ネタバレにならない範囲でリストを作っちゃいました.読まれる方はご参考までに.
人名:
翠(スイ),旋(セン),鰐(ガク)
※2文字以上の固有名詞は基本人名.「〇〇記」は作品名.
国名:
旻(ビン):南の大陸最大の国
耀(ヨウ):旻と燦に挟まれた,南の大陸の中央にある最古の国
燦(サン):南の大陸の国
乙(イツ):内海最大の島を領有する独立国
玄(ゲン):北の大陸の国
都市名:
鱗(リン):旻の都市.翠が生まれ育った.
稜(リョウ):旻の都
その他:
渺(ビョウ):?
中華風と銘打たれている通り、漢字の名前、国名に想像力をかき立てられます。
地理の説明にも広さを想像できる細やかさがありながらも、人に関する描写が大らかさを感じさせ、ふと南の方の気風を思い浮かべました。
海賊、島主、異世界から来た金髪の天女…煌びやかな情景が頭の中を駆け巡りました。
西洋風、または和風のチャンバラに慣れた頭に、色彩を感じる華やかさを纏った陰謀劇は真新しい刺激です。
登場人物の造形も、明らかに劣った者が存在せず、またそういう風に他者を扱う描写もないところに強く惹かれる点があります。
この物語を書いたという天女キムと、その物語に存在しなかったという翠…この結末は、目が離せませんでした。
頭領の娘である少女、翠と船乗りの青年の旋が中心になって動き出す物語。
二人はひょんなことから、天から降ってきた黄金色の髪の女の子と出会う。
父、飛禄は「天女様」ではないか?と推測する。
周りは野郎どもばかりだからか、翠に面倒を見るように申し付ける。
空から降ってきた少女の名前は、キンバリーホープ。
「キムでいいわ、スイ。助けてくれて、ありがとう」
それが、翠とキムの出会い……。
ここから彼女等の物語が動き始めるのであった。
想像しやすい文章と構成に、冒頭から一気に引き込まれる作品になっています。
この出会いがどういう物語を生んでいくのか、注目です!!