3章のあとがき


 ここまで読んでいただいて本当にありがとうございます。

 舛本つたな です。


 前章から今回の投稿まで、一年半もお待たせしてしまいました。それだけに、まだお読みいただいている皆様には感謝してもしきれません。重ねて御礼を申し上げます。


 今回の話は、書いて良かったなぁ、と自分で勝手にひたれる内容でした。

 若い頃よりもはるかに満たされているはずなのに、今の自分は何が不安なのだろう、そんな疑問に対するそれっぽい答えが書けたのでは? などと勘違いしています。

 こういう思考遊びを小説でやるのは良いですね。

 少し書きすすめるとキャラが勝手に動いてそれっぽい「答え」を発言したりします。本当にそうなの? と本で調べると、そのキャラと違った考えや解釈が見つかる。それを、別のキャラに教えて問答をさせる。

 そんな一人遊びばかりしていると、あっという間に一年半もたってしまいました。

 こんな感じで私は楽しんで書き続けています。


 特に、本作『トロル』では「こういう哲学もありますよ」とか「私はこういう風に考えます」など非常に面白い感想をいただけることが楽しい。私はこういった感想が大好きで、今回はその中から一つ紹介させていただきます。

 なお、感想のご本人である「カズゥーイ大佐」さんには事前に引用の許可をいただきました。以下の引用は、3.9話の脚注に修正後追加したものと同じですので、読むタイミングによっては再掲になってしまうかもしれません。


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(カタリが「他力本願」について、持論を展開するシーンに対して)

一応指摘させていただきたいのですが、親鸞教義における「他力本願」とは浄土往生による成仏を現世の我々に働きかける仏力とその根本である阿弥陀如来の別願(四十八願の第十八願)を示す言葉であり、人間の善意による施しとも現世における幸福追求とも区別されるものです。(ちなみに「他力」に対する「自力」は、自らの仏願に依らない功徳によって往生ないし成仏する働きを言います。)

特に、「他力」は曇鸞大師の『浄土論註(往生論註)』に由来する言葉であり、少なくとも浄土宗系の教学において上記以外の意味で使われることはまずありません(注:ご本人により一部修正)。

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 本作ではカタリが親鸞を揶揄やゆした上で、他力について持論を展開しています。しかし、カズゥーイ大佐さんのご指摘の通り、それは親鸞が説いた他力と定義から異なっているため、詭弁きべんに過ぎません。

 私も不勉強でして、カズゥーイ大佐さんの指摘でより正確に知ることができました。私なりに補足すると、「別願」とはその仏や菩薩に固有の誓いで、阿弥陀如来の別願は他者救済となります。親鸞はこの別願を特に重視し、他力本願を唱えました。

 これだけでは、やっぱり仏に依存しているだけなのでは? と思われる人もいるでしょう。その疑問の背景には、努力すればそれなりの見返りが期待できる、という現代の恵まれた状況があります。

 しかし、当時は戦乱が続き庶民がいくら努力しても殺されてしまう状況でした。努力しても無駄だと考えるのが普通で、死んで極楽浄土に行きたい、と末法思想が流行したほどです。当時の状況をふまえれば、親鸞の思想が単なる他者依存ではないことに気づけます。

 カズゥーイ大佐さんも現代の状況に配慮いただき、以下のようにカタリの詭弁を擁護されています。カタリがやった定義のすり替えというトリックを明確に指摘していますね……(汗)。


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真宗学上の理解では、自力成仏・自力往生を末法の世の人間では実現不可能だとして仏による他力の働きかけを唯一の手立てとするので、文中の「この世界」を「仏の本願」と読み替えれば無理なく論理展開できるかもしれません。

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 いや〜、楽しいですね。

 

 このような感想をいただけると私も「他力」を感じます。

 カタリ説の他力によれば、私がこの小説を書いた私の「自力」は読んでいただける方々からの「他力」を土台として成立します。だとすると、「他力」こそが中心かもしれません。

 今回紹介した感想の他にも、多くの方々から投稿のたびに「待ってました」「面白かったですよ」などの感想、また誤字の修正のお手間をいただいています。一年半ぶりの更新という私の不安も、このような反応がぬぐいさってくれました。

 許可をとっていないので、お名前の記載は控えさせていただきますが、みなさま、本当にありがとうございます。


 ついでに、マイリストやフォロー、高評価いただけると、私の承認欲求という救いがたい煩悩も「他力」で満たされるかもしれません(暗黒微笑)。


 それでは、またお会いしましょう〜。

 よろしく、つつがなく、あなかしこ。ばいばい



 舛本つたな

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[連載版] トロル 舛本つたな @masumoto_tsutana

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