異国情緒や冒険活劇のような爽快感も楽しめる、唯一無二のラブコメです!

 教科書でお馴染みのフランシスコ・ザビエルの末裔にあたる、シスターの少女が主人公の物語。
 彼女がユーモア、シリアス、慈愛と強さを持って、日本だけでなく世界を股にかける、そんな痛快なラブコメ作品です。



 まず、三人称で語られる本作の魅力はなんと言っても個性的な世界観と雰囲気。
 敬虔なシスターであり、スペイン人でもある主人公。彼女の言動、一挙手一投足がカラリと火照るラテン系の異国情緒を感じさせてくれます。それが物語全体に波及し、シエスタ、聖書、説教…。外国に馴染みのない私にはどれもが新鮮に映ります。

 主人公自身も魅力的で、キリスト教の教えを時に言葉で、時に拳で説き伏せる。
 ゲームやロック音楽が好きだったり、そのせいで守銭奴だったり。シスターらしからぬ彼女の行動には「次は何をやらかすのだろう?」という期待と驚きを持ってしまう。そして色々と“やらかし”ながらも物事をスカッと解決していく様がどうにも心地よく、読みやすい文章も相まって、この作品ならではの空気感を毎回のように楽しませてくれます。
 それでも、時折、シスターらしく慈愛を持って事に当たることもあるから憎めないんですよね…。

 ラブコメである以上、忘れてはならないのが『彼』の存在。冒頭から強烈な出会いとともに始まる恋路は、冒険活劇のような主人公の人生に反してゆっくりとしたテンポ。
 しかしながら主人公の中には出会って以降、必ず彼の存在があり、物語が進むにつれ少しずつその存在感が大きくなっていく。甘酸っぱい距離というよりは、むしろ気の置けない仲——悪友のようなポジションで居続けるため、作品の魅力である雰囲気を壊す事がない。

 なのに節々できちんと恋路が進んでいると分かる。その辺りは間違いなく作者様の力量でしょう。



 シリアスはあってもストレスは無い。爽快さ、痛快さはあっても呆気なさは無い。
 カラリと乾いたラテンの陽気な風を味わいながら楽しむラブコメ。新たな知見を得る、世界を広げるという意味でも、唯一無二の本作は必見です!

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