[ すい星のドレスがきれいなわけ ]

「ユウちゃん、あれがすい星さんよ」

「すい星? お星さまとちがうの?」

「目をこらして、よおく、見てごらんなさい」

「わあ! 長いドレス着てる!」

「そうね、とっても長くて、きれいなドレスね」

「ねえ、おねえちゃん。どうしてすい星さんだけ、あんなきれいなドレスを着てるの?」

「そうね。どうしてかしらね……




   [ すい星のドレスがきれいなわけ ]



 すい星さんはね。


 遠いとおい、とっても遠いところで生まれたの。


 そこはとっても遠いものだから、お日さまの光もなかなか届かない


  毎日が冬の世界


  毎日が雪の世界


 ある日、すい星さんはね、遠く輝くお日さまを見つけたの。


  毎日が冬の世界の中で


  毎日が雪の世界の中で


 お日さまは光と暖かさを届けてくれたの。


 だから、すい星さんはね。

     お日さまが大好きになっちゃった。


 だから、すい星さんはね。

     お日さまに会いたくなっちゃった。




 すい星さんはね。


 遠いとおい、とっても遠いところから旅立ったの。


 大好きなお日さまに会うために


  長い長い年月をかけて


  長い長い距離をわたって


 だけど、お日さまはね。すい星さんに来るなって言うの。


 お日さまは、すい星さんが嫌いなのじゃないのよ。


 お日さまは、すい星さんが大好きなの、だけど。



 お日さまは夏の世界のひと  光と熱から生まれたの


 すい星さんは冬の世界のひと 雪と氷から生まれたの


 夏の世界のお日さまと、冬の世界のすい星さんが出会うと


 すい星さんは、溶けていなくなっちゃうの。



 だから、お日さまはね。すい星さんを追い返しちゃうの。


 大好きなすい星さんが溶けていなくなっちゃうのは、とても悲しいから。


 だから、すい星さんは泣いているの。


 溶けていなくなるとしても、大好きなお日さまのそばにいたいから。



 すい星さんのドレスがあんなにきれいなのは


  またいつか会いに来るから


  わたしのことを忘れないでと


 すい星さんが流した涙でんだからなの。



 すい星さんのドレスがあんなにきれいなのは


  またきっと会えるのだから


  きみのことは忘れないよと


 お日さまが一番きれいな光を投げかけているからなの。




 ……だから、すい星さんってあんなにきれいなのね。きっと」

「なんだか、お日さまって嫌い。すい星さんが大好きなら、追い返したりしなかったらいいのに」

「ユウちゃんがお日さまだったら、すい星さんをどうしてあげたい?」

「ユウだったらね、すい星さんのためにアイスクリームをたくさん買ってきてあげる。アイスクリームをたくさんたくさん食べたら、すい星さんも、消えていなくなったりしないでしょ?」

「そうね。そうできたらいいのにね」

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