[ 宿り木 ]
アタシはキミに寄りかかる
キミはびくともしない
キミにそっと頬ずりする
頬がちょっと痛い
キミの中を命が流れる
キミは身体を揺らす
アタシは耳をそばだてる
命の音を聞き取るために
キミの中を命が駆けめぐる
キミは腕を精一杯伸ばす
キミは命をほとばしらせる
アタシはそれを分けもらう
アタシに物心がついたころ
キミは、とっても大きかった
アタシだって、とっても大きくなったけど
キミはもっと、もっと大きい
アタシは、キミに寄りかかって生きてきた
キミは、一人でも生きていける
アタシはもう、長くはない
この冬を越すことはない
それがアタシの
アタシの命は終わらない
ここに子供たちが根付くから
それがアタシの
夜霧がアタシとキミとを包む
アタシは、キミを抱きしめる
もう、キミのほとばしる命を受け取れないけど
せめて、最後の思い出に、と……
暖かい腕に抱かれ
アタシの頬が水に濡れる
もしかして、キミ、泣いているの?
アタシなんかのために
何もしてやれなかったのに
涙を流してくれたキミ
子供たちをよろしく。
アタシの命たちをよろしく。
楠の木よ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます