β-2

 中央広場には人が集まっていた。女小友が多い。どうやらモンスターの大群が来ることを聞いて、逃げるように言われたらしい。

 「お前さんは何で今駆け込んできたんだい?」

 「えっ……⁉あ、えっと、トイレにいってたので気が付かなかったんです!」

 「なるほどねえ、不運だったねえ、でも兵士さんたちが守ってくれるからきっと平気さ。」

 「そうですね……ちなみに、おばあちゃんは何をなさってるのですか?」

 「今はもうやめたけどねえ、若い頃は雑貨屋をやってたんだい。そのころいい男と出会ってねえ……」

 なるほど、NPCのクオリティすげえな。おばあちゃんに適当に相槌を打ちながら、今来た方角をみやる。砂埃や叫び声が上がっていて、そこで起こる戦いの激しさを物語っている。

 ただ、もう平気かな。と心のどこかで安心していた。逃げ切ったし、これからもう一回平原で狩りをし、レベルを上げようだとか未来について考えていた。

 だがしかし、それは間違っていた。ふと視線を上げると、目前に鳥がいた。完全に、空にいた鳥のことを忘れていた。

 慌てて横に転がりよける。しかし、鳥は勢い余ってか今さっき話していたおばあさんの右目を足で穿った。上がる悲鳴。逃げる人々。俺も例にもれず、逃げようとした。しかし、すぐに行ける道は先ほど来た道しかなく、数瞬迷った結果やはり先ほど来た道を行くことにした。やはり、心のどこかでNPCだと思っているからか、その死について何も感じなかった。


 『称号:極悪人を獲得しました』


 少し(50Mくらいかな)いったところで、そもそも大通りをいく必要がないことに気付いた。迷わずすぐに横道にそれ、ひたすら進んだ。右に曲がって、左に、右に、左に曲がって、とにかく離れる。どこも人はおらず、お店ですらシャッターを開けたまま人がいなくなっている。泥棒とか起きないのはすげえな。……ちょっと待てよ。これやってもばれないよね。だって人はいないんだし。そもそもプレイヤーの行動を規制する文言は利用規約になかったよね……


 5秒葛藤して、やることにした。

 近くにあった店に入る。これは……魔道具?魔道具ショップか。お、アイテムボックス。こっちには魔術筆?ってなんじゃそりゃ。値札は100000Gから、高いのは2000000Gくらいあるな。まあでもばれなきゃ大丈夫でしょ。全部アイテムボックスに突っ込む。


 『称号:泥棒を獲得しました』


 今更何を。

 次に見つけたのは、薬屋。ポーションが並んでいる。無論全取り。

 さらに、武器屋。県や槍など、質も種類も様々なものがある。が、とりあえず全部。


 『称号:泥棒 が大泥棒に変化しました』

 『称号:人類の敵を獲得しました』


 町の目立つ商店に残っているものはほとんどなくなった。アイテムボックス自体は、高価なもののたくさんあったので、ほぼすべてのものを入れられた。

 それで、今回の略奪で、最もおいしかったのは、スキルオーブショップである。経験値薬とかもあったので、大量使用。スキルは全部取った。そんな感じで、今の俺のステータスはこんな感じだ。


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 PN:お茶 Lv:36 エルフ 平常

 HP:10⇒65/10⇒65 MP:15⇒60/15⇒60 SP:70⇒0

 物攻:10⇒20 物防:10⇒20

 魔攻:15⇒25 魔防:15⇒25

 敏捷:10⇒20


 スキル:火魔法Lv.3、水魔法Lv.3、風魔法Lv.3、土魔法Lv.3、回復魔法Lv.3、魔力探知魔法Lv.3、生命探知魔法Lv.3、気配探知魔法Lv.3、魔力回復Lv.3、自己再生Lv.3

 特殊スキル:筋力増強Lv.2

 称号:ランナー、大泥棒、極悪人、人類の敵

 ///////////////////////////////////////////////////////////


 店にある経験値役を使ったら、いつの間にか36Lvっていう。乾いた笑いしか出てこねえ。っていうか、称号ひどいよな。俺がなにしたっていうんだ。

 あと魔法スキルだが、魔法経験値役なるものも置いてあった。一つ使えばlvが一つ上がるが、Lv.3までしか効果はなかった。ちなみに、1本3000000G。とても乱用するべきものではないね。なんでこんなにセキュリティー意識低いんだろう。


あと、ステータスは序盤のそれじゃないね。まあでも、チートを使ったわけではないのだから、別にいいだろう。あくまでもこんなことをできるようにした運営が悪いのだ。




とあるプレイヤー視点


 街は、どんよりとした雰囲気に包まれていた。序盤の経験値・ゴブリンが全く見つからないという予想外の事態に陥っているためだ。

 掲示板では、

「ゴブリンの数少なすぎない?」

「初心者剣士ワイ、30分探して成果が1匹」

「運営に問い合わせた結果、現在はフィールドの限界スポーン数らしい。どこがだ」


とネガティブな感情で溢れかえっていた。だが、その中でいくつか、「モンスタートレインを見た」という書き込みがあった。それも一つではない。様々な場所に書かれている。いたずらだとしても、結構大変な量だな。


なんにせよ我々にできることなどない。たとえ実入りが少なくとも、外へ狩りに行くしかないだろう。そう思って門へ足を向けた。

…5分ほど歩いただろうか。何やら門の前で人だかりができている。

「出してよ!」

「そうだ!門を開けろ!」

「外にはモンスターの群れがいます。不用意に出ても食い殺されるだけです。」

「私たちは渡り人よ!死んでも生き帰るわ!」

そこまで言うなら出て行けと、門が開いた。みんながみんな門に殺到する様子に異常なものを感じ、上からその様子を見てみることにした。

城壁には、プレイヤーと兵士NPCが入り混じっていた。が、その口は一様に驚愕を表していた。つられて同じ方向を向く。そこには、モンスターの集団がこの町に向かって走ってきているのが見えた。


 「おいおい、うそだろ……」

 「初日からこのイベントはつらくね」

 「キングウルフ、ゴブリンロードにブラッドイーグル、トロルにオーガ、極めつけはジャイアントワームとワイバーンだと?Aランクってなんだっけ」


 その混乱する彼らに向かって、ひときわ強そうな奴(実は騎士団長)が一括。


 「逃げろ!あれにはかなわん!西の海に出るか海岸線に沿って北へ逃げろ!」

 「「「「「「えええええええ!!!???」」」」」」

 いや、賢明だけど!ふつうそこは戦うところだよ!




 結局、少しでも時間を稼ぐ!と言ってくれた騎士たちを残して、俺たちは逃走を開始した。街の女子供はとりあえず中央広場に集めたのち、集団で船着き場まで連れていくそうだ。城壁には一部の野次馬プレイヤーが残り、ほかは帰った。

 この町の全員を全速力で避難させ、店などには鍵もかけさせない始末だ。一部文句を言う人も出たが、きしだんちょーは

 「盗人は食い殺されるから、関係ない」

の一言で黙らせた。


 まあでも、犯罪行為は誰も見ていなくても犯罪をしたことがわかるシステムがある。頭上に浮かぶネームタグの色が変化するのだ。




【始まりの町は】序盤総合スレPart18【広かった】



356.名無しの冒険者

>>350

 それな。さすがにこの少なさは何かおかしいよな。


357.名無しの冒険者

ちょwwwwwやばいwwwww


358.名無しの冒険者

>>357どないしたん


361.名無しの冒険者

森にモンスターの大群現る


362.名無しの冒険者

kwsk


363.名無しの冒険者

この糞スポーン少ないときに?

デマは他スレで


365.名無しの冒険者

俺も遠目で見たからわからんのやが

平原と森の境目でちょっと強いゴブリンが出ることが分かったから、そこで狩りをしてたんだ。数が減ってきたから少し森の奥入ろうかってパーティーの面々と話してたら地響きが。なんだと思って見てみたら巨大な蛇と恐竜が迫ってきてワロタ


366.名無しの冒険者

デマは他スレで


367.名無しの冒険者

365のパーティーメンバーです

デマじゃないです。

街の方に一目散だったから、運営が何かイベントを起こしたとかもよ・考えるべき


368.名無しの冒険者

mjk


369.名無しの冒険者

でもワールドアナウンス来てないぞ?


370.名無しの冒険者

ベータだから何があるかわからんのやし、負けイベントかもよ?

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