3話 残念なのあたし?

「我は冷酷にして金欠にして半尻な、漆黒のあゆた!」


再び声がしたが、やはり姿は見えない。

声の質。気配の感じから、碧依や接続式神と同じサイズの何かだろう。


馬車内か、もしくはかなり近くにいる声だ。

少なくとも距離的にすぐ馬車の隣だろうか。


碧依くんの緊張とは対照的に、まるで現実的な出来事ではないかのような、はなもりは落ち着いていた。恐怖を実感できないからこそ、怖くない。そんなところだ。


「神将級の碧依くんの結界を突破するって、かなり凄い奴だね」

はなもりは、少し微笑みながら言った。

根性座ってるはなもりに、抱き着かれるとシルスの心も安心した。


「漆黒のあゆたちゃんって、金欠で半尻って、通り名としては、残念な子だね」

はなもりの分析にシルスは、

「言われて見れば、残念な子だね」


「残念なのあたし?」

シルスの言葉に、姿の見えない相手が反応した。


「そんな事ないよ!」

はなもりは素早くフォローをしてくれたが、

「あたし恥ずかしい」

その言葉の後、あゆたは気配を消した。


御者席との間のドアが開き、碧依くんが馬車内に入ってきた。


「ほおおこれははくですね。相当強い魄です。多分シルスに惹かれて着いてきてしまったのかも知れない」

「わたしに?」

「式神としては相当なレベルになると思います。出来れば・・・」

「捕まえる?」

「今は気配が消えたので、もし憑いて来たのであれば、可能でしょう」

「どうやって式神にするの?」

「相思相愛が絶対条件です」

「魄と相思相愛?」

「魄とは大地に染み込んだ想念から生まれた土の人形」

「人形?」

「大地が作った人形と言ったところでしょうか。今日はここで泊まって見ます?」


碧依はシルスの接続式神を見つめた。


コックピット内でシルスは、はなもりに

「どうしよう?」

「神将級式神を捕まえる為にここに来た訳だし、断る理由はないと思う」

「そうだよね」


シルスは少し考えた後、

「そうする」

と返事した。



つづく

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思惟ちゃんと式神的な巨大ロボット 五木史人 @ituki-siso

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