最終話 娘との出会い

「ママー、これよんでー」

「はいはい、二人ともこっちへおいで」

 あれから十年が経った。私は結婚をして、可愛い可愛い双子の娘を授かった。

「凛ちゃん、パパを呼んで来てくれる?」

「えー、やだよー。パパあしがくさいんだもん」

「じゃあちよちゃんがいく!」

「ありがとう、千代ちゃん」

 今日は日曜日。映画はまだこの子達は観れないけど、絵本には夢中。いつか一緒に映画も見たいな。

「パパつれてきたよー。ねてた」

「悪い悪い、遅くまで新作料理作ってたから」

「パパー、おりょーりつくって」

「おぉ、良いぞ。パパが美味しいの作るからな」

 絵本を見ていた凛が私の方を向いた。

「ねぇ、なんで、りんちゃんは、りんっていうの?」

「あー、りんちゃんずるい。あたしのちよちゃんもおしえてー」

「良いわよ。千代ちゃんは英語でCHIYO。凛ちゃんは英語でRIN。二人のアルファベットはCとR。その中にLOVEが入ると、ほら。CLOVERになるのよ。四葉のクローバーは幸せを運んでくるの。あなた達二人に幸せがありますように、という意味よ」

 子供達は目を合わせた。

「ぜんぜんわかんなーい」

「じゃぁもっとお姉さんになったら、もう一度聞いてね」

「はーい」

「ねぇママ。あれはなんですてないの?」

「どれかしら」

「あれー。おとのでないおりゅごーる」

「あれはね、とても大切な想い出が詰まっているの」

「そうだぞ凛。これはパパが昔、情熱を掛けて接着剤でくっつけたんだ」

「えー、パパへたくそー」

「はは、そりゃまいった」


 大切な人と一緒にいる。こんな当たり前の事が、本来はどれだけ貴重な事なんだろう。こんな暖かい日は、心まで暖かかくなる。でも本当は、どこにいたって。何をしてたって。あなたがいれば、あなた達さえいれば、暖かくない日なんてないんだよ。

 私にとって、出会った全ての人が、運命の人だから。


 日曜日の太陽は、窓から光を差し込み、不恰好なオルゴールを眩しく照らしている。でも私の中では、その横で一緒に光を浴びる四葉のクローバーのキーホルダーの方が、より一層眩しく見えた。

           

                                                   終

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神様、ごめんね @rohisama819

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ